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「リンゴの落下から万有引力を発見」実は間違い? ニュートンの逸話に隠された「なるほど物理学」

東洋経済オンライン / 2024年8月14日 18時0分

なぜリンゴは地面に落ちるのに、月は落ちてこないのでしょうか?(イラスト:freehand/PIXTA)

「重力はなぜ存在するのか?」という問いは、物理学の歴史の中で極めて重要な役割を果たしてきました。数多の物理学者がこの謎に挑み、自然界の基本的な法則や宇宙の構造を解明していったのです。

カルフォルニア大学バークレー校教授で、素粒子物理学や宇宙論を専門とする野村泰紀さんも、そうした謎に挑む1人です。本稿では、野村さんの最新刊『なぜ重力は存在するのか』からの抜粋で、「ニュートンのリンゴの逸話に隠された物理学における重要ポイント」について紹介していきます。

月にもリンゴにも等しく働く

ニュートンが発見した「万有引力の法則」について紹介していきましょう。

【イラストで解説】物体は、赤道と北極・南極を除き、地球の中心からほんのわずかにずれた方向に落ちていく

「万有引力」とは、文字通り、「万物(あらゆる物体)が有する引き合う力」を意味します。そもそも地球をはじめとする天体は、塵とガスが万有引力によって引き合い、少しずつ集まっていくことで誕生したと考えられています。万有引力がなければ、私たちはそもそも誕生していなかったわけです。

さて、よくこの万有引力の発見の経緯について、ニュートンはリンゴが木から落ちる様子を見て、その法則を発見したと言われることがあります。しかしこの逸話は、事実だったかどうかを別にしても、逸話として意味を成していません。

なぜリンゴが落ちるのを見ると、万有引力を思いつくのでしょうか?

正しい逸話は、「ニュートンは、なぜリンゴは地面に落ちるのに、月は落ちてこないのかについて考えた」です。

それに対するニュートンの答えは、「月も落ちている」でした。これにより、ニュートンは、リンゴが木から地面に落ちるのも、月が地球の周りを回るのも、同じ万有引力が原因であると見抜いたのです。

当時は月や太陽、他の天体が存在する天上の世界と、地上の世界は、まったく別の世界であると考えられていました。そのため、当然のことながら、それらを支配している法則も異なると考えられていました。

地上の世界には、さまざまな運動が存在するけれど、天上の世界では、円を基本とする円運動だけが行われていると考えられていたのです。

それに対し、ニュートンが発見した万有引力の法則は、天上の世界も地上の世界も同じ物理法則に従っており、自然の背後にある物理法則に天上、地上といった区別はないことを示す、非常に画期的なものでした。

つまり、ニュートンは重力の法則を明らかにすることで文字通り「世界の見え方」を一変させたのです。

「万有引力」と「重力」は同じもの?

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