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「勝算の低い戦争」に日本が突き進んだ背景事情 行動経済学で紐解く、日本軍部の心理

東洋経済オンライン / 2024年8月15日 14時0分

(撮影:今井康一)

「軍部の台頭」「日中戦争の泥沼化」「資源確保のため」など……かつて日本がアメリカに戦争を仕掛けた原因はさまざまな学問で研究対象になり、現在では多くの事実が明らかにされています。

なぜ勝算が低い戦争に日本の軍部は突き進んだのでしょうか。経済学的にその理由を紐解くときに見えてくるのは、意外にも人間の心理面でした。

※本記事は、書籍『超速・経済学の授業』から一部抜粋・大幅加筆したものです。

なぜ勝算の低い戦争に突入したのか

1941年12月、日本はアメリカに攻撃を仕掛けました。いわゆる真珠湾攻撃です。その結果、1945年の終戦まで国内外で多くの犠牲者を生みました。

【画像でわかる】勝算の低い戦争に突入してしまうワケ

「両者の国力の差は歴然だったのに、なぜ日本は勝算の低い戦争に突入したのか」。多くの人がこのように疑問に感じたことがあるはずです。現在では経済学などを中心に、その理由は次の2つの理論で説明できると言われています。

日本が戦争を仕掛けたことを説明する理論
・パワーシフト理論
・プロスペクト理論

ひとつはパワーシフト理論という考え方です。パワーシフト理論とは、国際政治学の理論のひとつで、国と国の力関係が急激に変化したり、不安定になったりした場合、戦争に発展しやすいという考え方です。

特に衰退する国の場合、国力の低下を不安に感じて、敵対国に早めに戦争を仕掛けるインセンティブが働くとされています。

1941年12月、日本が真珠湾攻撃で第2次世界大戦に参戦した頃のアメリカと日本を比較すると、アメリカは世界恐慌で受けた不況から脱出して景気が回復していました。

一方の日本は次の理由から経済力が弱まることが見込まれていました。
まず、エネルギー資源の問題です。当時、日本はアメリカから石油を輸入していましたが、アメリカは日本への石油の供給を停止することを決定していました。石油輸入の7割をアメリカに頼っていたので、供給が止まってしまうと日本の備蓄量で賄ったとしても、2~3年で底をつくことが見込まれていました。

次に戦力面です。ヨーロッパで第2次世界大戦が始まった1939年の頃、太平洋地域での日米の戦艦や空母による軍事力の差はそれほどありませんでした。なぜなら、アメリカは、その軍事力を欧州の戦争に振り向けていたからです。ところが、アメリカは大国の経済力で、太平洋地域の軍事力を増強しつつありました。

そのため、数年後には太平洋地域での軍事力の面でも、不利な状況に追い込まれることが濃厚となっていたのです。実際、零式艦上戦闘機(零戦)は約1万機が生産されたものの、 アメリカは戦争中に約30万機の航空機を生産しました。こうした状況を踏まえて、日本はアメリカとの差が拡大する前に戦争を仕掛けるのが得策と考えました。

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