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「中宮彰子の出産後」に紫式部を襲った"深い憂鬱" 夜が明ければため息をつき、1人思い悩む日々

東洋経済オンライン / 2024年8月17日 9時30分

そしてこのような歌を詠んでいます。「水鳥を水の上とやよそに見む われも浮きたる世をすぐしつつ」

「呑気そうな水鳥を、水の上のよそ事だと私は思わない。私もまた他人からしたら、豪華な職場で浮かれ、地に足のつかない生活をしているように思われているのだ。でも、本当は水鳥だって大変なはず。私も、憂いばかりの人生をすごしているのだ」というような意味です。

中宮の出産は、紫式部にめったに見ることができない光景を見せてくれたことでしょう。その一方で、出産に関連する仕事のバタバタで、紫式部は少し疲れていたのかもしれません。

元々、宮仕えをどうしてもしたいと思い、この世界に入ったわけでもないのです。(辞めたいな)という気持ちが紫式部の心を占めていたのでした。とは言え、急に辞めることもできない。(そのような想い、忘れよう、忘れよう)と紫式部の心は動揺していたのです。

紫式部は「水鳥も、外見はあのように、何も気にかかることなく遊んでいるように見えて、実は苦しいのだろう」と水鳥の「本心」と自分(紫式部)の心を重ね合わせたりしています。

心が晴れない時間が続く

そのようなときに、小少将の君(中宮彰子の女房。父は源時通。時通は、彰子の母・源倫子の同母兄弟)から手紙が届きます。

紫式部が返事を書くときに、時雨が降り、曇り模様になりました。「空模様も私と同じ。心騒いでいるよう」と記して、歌を添えて使者に託します。憂鬱な想いを断ち切ろうとしても、すぐにできるものではありません。紫式部の心は晴れないままでした。

(主要参考・引用文献一覧)
・清水好子『紫式部』(岩波書店、1973)
・今井源衛『紫式部』(吉川弘文館、1985)
・朧谷寿『藤原道長』(ミネルヴァ書房、2007)
・紫式部著、山本淳子翻訳『紫式部日記』(角川学芸出版、2010)
・倉本一宏『紫式部と藤原道長』(講談社、2023)

濱田 浩一郎:歴史学者、作家、評論家

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