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絶滅危惧「ツシマヤマネコ」人のせいで犠牲の悲劇 ロードキルは単なる「不幸な交通事故」ではない

東洋経済オンライン / 2024年8月18日 8時30分

100頭前後しか生息していないヤマネコ

環境省の調査によると、ツシマヤマネコは現在、わずか100頭前後しか生息していません。そのため、イリオモテヤマネコ同様、国の天然記念物であり(イリオモテヤマネコは特別天然記念物)、種の保存法に基づき、国内希少野生動植物種に指定されています。

絶滅のおそれのある野生生物の種のリストをまとめた「環境省版レッドリスト」でも、最も絶滅のおそれが高いとされる「絶滅危惧IA類」という評価です。

そんな希少なツシマヤマネコが、環境省が記録をとりはじめた1992年から2024年8月現在までに合計135頭、ロードキルによって死亡しています。地球上にたった100頭ほどしかいないのに、交通事故によって毎年4~5頭も死んでいる計算になります。

実際には、交通事故だけでなく、シカを捕獲するくくりわなにかかるなどして、さらに年に数頭が死んでいます。

毎年4~5頭の死亡を人口1億2500万人の日本人に置き換えると、毎年500万~625万人が亡くなっている計算になります。このペースでツシマヤマネコの死亡が起こり続ければ、そう遠くない未来に、彼らは地球上からいなくなってしまうでしょう。

生息地の対馬では、ツシマヤマネコが安全に暮らせるように、事故発生地点にドライバーへの注意喚起の看板を設置したり、ツシマヤマネコが安全に移動できるよう道路と林をつなぐ足場を作ったりするなど、いくつかのロードキル対策を講じています。

こうした対策を社会に広く発信することで、制限速度を順守するドライバーが増えることを期待しています。車両のスピードが落ちれば、それだけ事故に遭う個体は減るでしょうし、不幸にして衝突した際も命が助かる可能性はあがるはずです。

轢かれて死んだ――だけじゃない?

ツシマヤマネコにかぎらず、全国各地で日々発生し続けているロードキルですが、その全容や遺体の死因についての詳しい調査はほとんど行われていません。ツシマヤマネコのロードキル調査は、希少動物であるがゆえの例外といえます。

ロードキルによる遺体の大半は、道路の管理者によってそのまま焼却処分されるため、記録に残りません。ほとんどが解剖されることなく、死亡時の状況から交通事故死と判断され、そのまま処分されているのが現状です。

ぼくが知るかぎり、ロードキルやその背景に興味を持って遺体の死因究明を行っている研究者は、日本国内にはほとんどいません。

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