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絶滅危惧「ツシマヤマネコ」人のせいで犠牲の悲劇 ロードキルは単なる「不幸な交通事故」ではない

東洋経済オンライン / 2024年8月18日 8時30分

しかし、これまで調べられていないから明らかになっていないだけで、ロードキルの中には、何らかの「異変」が原因となって起きているケースがあるかもしれないと、ぼくは考えています。

まだ集めた症例を解析中なので確かなことはいえませんが、例えば、寄生虫などの病原体に脳が侵されて脳炎を起こしていたり、肺が侵されて呼吸困難になっていたりする動物なら、もうろうとした状態で車両が行き交う道路に出てくるかもしれません。

特にトキソプラズマという寄生虫(トキソプラズマについては過去記事「愛猫を失った男性の『ネコ』は外が幸せ」という誤解」に詳しく書いています)は、寄生した動物の行動を変容させる可能性が研究によって示唆されており、これによって起きているロードキルがあるかもしれません。

実際、タヌキやアナグマなどの野生動物の遺体を解剖すると、トキソプラズマによる病変が観察されることもあります。

ほかに、人間による虐待で傷ついて死んだ動物が道路上に遺棄され、ロードキルに偽装されたのではないかと思われるケースも、ぼくは目にしています。なんとも許しがたいことです。時間と予算があればもっと多くの遺体の死因を究明できるのですが、1人では1日に解剖できる数もかぎられていて、常々、歯がゆく思っています。

不幸な動物を減らす責任がある

ロードキルの原因の多くは人為的なものですから、ぼくたち人間には野生動物の死因をきちんと調査し、不幸な動物を減らす責任があります。

ただ、これは動物たちのためというだけでなく、ぼくたち人間のためでもあります。ロードキルの原因を探ることで、その背景にある地球環境の変化や、未知の病原体、人に影響を及ぼしうる環境汚染物質などを事前に察知できるかもしれないからです。

ロードキルは、単なる不幸な交通事故ではありません。きっと「自然からの警告」でもある――ぼくはそう考えています。

中村 進一:獣医師、獣医病理学専門家

大谷 智通:サイエンスライター 書籍編集者

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