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中国の造船大手が「生産能力増強」を急ぐ思惑 世界的な造船所不足に対応、受注上乗せ狙う

東洋経済オンライン / 2024年8月19日 19時0分

中国の造船大手は大量の受注残を抱え、建造中の船舶がドック内にひしめき合っている。写真はCSSC傘下の青島北海造船(CSSCのウェブサイトより)

中国の造船最大手で中央政府直属の大型国有企業である中国船舶集団(CSSC)が、生産能力の増強を急いでいる。同社の中核上場子会社である中国船舶重工は7月27日、生産キャパシティの引き上げと受注拡大を狙いにした2件の大型買収を発表した。

【写真】中国の民営造船大手、新時代造船のドックを出る新造コンテナ船

1件目の買収では、中国船舶重工の孫会社である中船天津船舶製造が、(CSSC傘下の国有造船会社である)天津新港船舶重工の臨港廠区の一部資産を総額40億4400万元(約857億円)で取得する。その中には50万トン級および30万トン級の大型乾ドック、全長817メートルの艤装用埠頭、同858メートルの船舶保修用埠頭などが含まれている。

資産買収通じて規模拡大

もう1件の取引では、中国船舶重工の100%子会社である武昌船舶重工集団が10億4400万元(約221億円)を投じて、(CSSC傘下の投資会社である)武船投資控股が保有する武船航融重工装備の全株式を買い取る。

武昌船舶重工集団と武船航融重工装備はともに湖北省武漢市に本拠を置き、工場が隣り合わせの場所にある。また、武船航融重工装備は保有する生産施設を武昌船舶重工集団にリースしている。

今回の買収により、武昌船舶重工集団は造船所の規模を効率的に拡大し、ハイテク技術を用いた付加価値の高い船舶の生産能力を高められるとしている。

CSSCが総額50億元(約1060億円)を超える資産買収を決断した背景には、造船市場の空前の好景気がある。中国船舶工業協会のデータによれば、中国の造船会社による2024年上半期(1~6月)の新規受注量(載貨重量トン数ベース)は5422万トンと前年同期比43.9%も増加した。

この好景気をもたらしたのは、造船需要の高まりに対する供給能力の不足だ。世界の造船業界は2010年代を通じて10年を超える長期不況に見舞われ、数多くの造船所が閉鎖に追い込まれた。浙商証券の調査レポートによれば、2024年初め時点で稼働している全世界の造船所は368カ所と、2008年の1031カ所から6割以上減少してしまった。

民営大手も生産能力引き上げ

ところが、新型コロナウイルスの世界的大流行やロシアのウクライナ侵攻をきっかけに生じた海上輸送力の逼迫や、二酸化炭素(CO2)の排出量を削減するためのクリーンエネルギー船への切り替えなどが重なり、過去数年の間に新造船の発注量が急増。世界中の造船所で、新規受注を断らざるをえないほど生産能力が逼迫する状況になった。

そんな中、生産能力の拡大に動き出した企業はCSSCだけではない。中国第2位の民営造船会社で慎重な経営で知られる新時代造船も、本拠地の江蘇省で大がかりな拡張計画を始動させた。同社は約50億元(約1060億円)を投じて超大型の乾ドックを新設し、増加し続ける需要に応える。

中国の民営造船最大手の揚子江船業集団は、クリーンエネルギー船専用の新たな造船所の建設に乗り出す。同社は(建設予定地である)江蘇省靖江市新橋鎮の地元政府と7月中旬に契約を締結。2026年末までに造船所を完成させ、稼働させる計画だ。

(財新記者:李蓉茜)
※原文の配信は7月29日

財新 Biz&Tech

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