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「0.1%」は高すぎた?預金金利めぐる銀行の誤算 貸出金利の引き上げ困難なら収益に下押し圧力

東洋経済オンライン / 2024年8月19日 8時30分

預金金利の引き上げ幅をめぐり、銀行間で考え方が分かれていた(撮影:梅谷秀司)

「正直に言って、0.1%は想定より高かった」。中部エリアの地方銀行幹部は、預金金利の水準についてこう打ち明ける。

【図表】追随率という概念に再び直面した13年ぶりの「金利ある世界」

7月31日、日本銀行が追加利上げに踏み切った。市場金利の上昇を受けて、国内の銀行も預金金利を次々に改定。ネット銀行を除くほぼすべての銀行が、普通預金金利を従来の0.02%から0.1%に引き上げた。

足並みをそろえたように映るが、一部の銀行は追加利上げ後の預金金利を「0.08%」と想定しており、引き上げ幅をめぐる考え方は必ずしも一致していなかった。ところが、メガバンクが先行して「0.1%」を打ち出したことで、結果的に他行も追従せざるをえなくなった。

預金金利を左右する「追随率」

「追随率を4割とすると、0.15%の利上げに対して0.1%の預金金利は、ちょっと大きい」。楽天銀行が8月7日に開いた決算説明会で、永井啓之社長はそう説明した。

追加利上げ時に、預金金利をどこまで引き上げるか。0.1%派と0.08%派を分けたのは、「追随率」をめぐる見解の相違だ。2006年から2007年にかけての利上げ局面では、預金金利は政策金利におおむね0.4を掛けた水準まで上昇した。

その後、日銀は2008年から利下げに転じ、2013年にはゼロ金利政策を導入。政策金利と預金金利が逆転し、追随率の議論はもはや意味をなさなくなった。13年ぶりとなる「金利ある世界」への突入は、ほこりをかぶっていた追随率という概念の棚卸しでもあった。

日銀は3月にマイナス金利政策を解除し、政策金利の誘導目標を従来のマイナス0.1%からプラス0.1%程度に変更した。

「マイナス金利解除は過去に例がない事態。ネット銀行の台頭も読み切れない」(首都圏の銀行首脳)。預金金利の設定に迷う声も聞かれる中、三菱UFJ銀行や三井住友銀行が先陣を切り、預金金利を従来の0.001%から0.02%に引き上げると発表。翌日以降、他行もなだれを打つように倣った。

日銀が追加利上げによって年内にも政策金利を0.25%まで引き上げると目されるようになる中、各行の意識は預金金利の引き上げ幅へと移った。政策金利が同水準になった2006年7月当時の預金金利は0.1%。過去の実績を踏まえれば、0.1%派に理があるように見える。

0.08%派の言い分

一方、0.08%派は「追随率4割」というセオリーに着目した。追加利上げによる上昇幅は0.15%であり、預金金利の引き上げ幅は0.15%×0.4=0.06%にとどまるからだ。実際、複数の地銀は預金金利の水準を0.02%に0.06%を加えた0.08%と仮定し、追加利上げ時の収益影響を試算していたようだ。

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