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ついに到来!電子部品に訪れた「AIブーム」の濃淡 村田は新型投入、日東電工とミネベアは上方修正

東洋経済オンライン / 2024年8月20日 8時0分

一方で、活況に乗り遅れた企業もある。セラミック部品大手の京セラは、今2025年3月期第1四半期(4~6月)決算で営業利益210億円(前年同期比18.4%減)に沈んだ。主力のコアコンポーネント事業の落ち込みがその一因で、半導体関連部品は営業利益64億円(同18.1%減)にとどまった。

京セラの谷本秀夫社長は「有機パッケージ製品のGPU向け需要の取り込みが遅れた」と決算説明会で語った。これはエヌビディアに入り込めていない現状を指すとみられる。2番手以下の半導体メーカーでの認証作業を急いでいるものの、同社担当者は「本格的な業績への貢献は来期からになるだろう」と語る。

従来型データセンターも投資増加

好調なのはAI関連のデータセンターにとどまらない。従来型のデータセンターも、前期まで低調だったHDDへの設備投資を増やしている。

HDD用ヘッドとサスペンション大手のTDKは「AIが処理するデータ量の増加に伴い、既存データセンターの保存容量が足りなくなっている。高性能なHDD向け部品の需要が高まった」(担当者)と語る。これらを含む「磁気応用製品」セグメントは前2024年3月期に356億円、前々2023年3月期は564億円と2期連続で巨額の営業損失を計上しており、今期も赤字が残ると見込まれていた。

ところが今期第1四半期(4~6月)決算で、売上高550億円(前年同期比43.9%増)、営業利益8億円へ急浮上。TDKは「まだ需要動向に不透明な部分がある」と慎重だが、この調子が継続すれば通期黒字化も期待できそうだ。

総合材料メーカーの日東電工は、CIS(Circuit Integrated Suspension)という小さな製品を扱う。HDDに内蔵する記録用ディスクと接触して情報の読み書きを担う部品で、世界シェア100%とされる。

円安やこの高収益品の出荷数量が大幅に増えたことを受け、今2025年3月期の営業利益予想を当初見込みから400億円引き上げ、1800億円に修正。HDDの高容量化で搭載ディスク数が増え、1台当たりの使用量が伸びたのも後押しした。

総合部品大手のミネベアミツミも、HDD向け部品の旺盛な需要などを背景に、業績予想を上方修正。今2025年3月期の売上高は期初から600億円増の1兆5600億円、営業利益は同30億円増の1030億円を見込む。

同社はHDD関連で小型ベアリング、スピンドルモーターなど部品4種を供給する。貝沼由久会長は「(上方修正の額は)為替の不安定さもあり第1四半期の上振れ分のみにとどめたが、第2四半期も非常に強い手応えを感じている」と決算説明会で自信を見せた。

今後も投資の活況は続く

AI需要を背景としたデータセンター関連の投資は、しばらく活況が続くとみられる。国内では、シャープが大阪府堺市に所有するテレビ向け液晶パネル工場の跡地で、ソフトバンクやKDDIなどがAIデータセンターに転用する方向で検討が進んでいる。

アメリカのアマゾンも2023〜2027年にかけて、日本に約2.3兆円を投資すると明らかにしている。データセンター建設や運営体制の強化に充てるという。マイクロソフトも4月、日本へのAI関連設備などに今後2年間で約4400億円を投じると公表した。

こうした動きと比例し、関連部品の引き合いはさらに強まりそうだ。先端品を得意とする日本の電子部品メーカー各社にとっては絶好の商機。今後はAI投資のビッグウェーブに乗れるかが、成長の明暗を分けることになりそうだ。

石川 陽一:東洋経済 記者

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