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「ポスト資本主義」では日本が再び先進国になる訳 マルクス・ガブリエル氏が語る日本の可能性

東洋経済オンライン / 2024年8月21日 10時30分

――著書では、倫理資本主義において過剰な消費を抑制する必要性を述べていますが、現実にはなかなか難しいのではないでしょうか。

それは個人ではなく、企業側の問題ですね。私たちが消費する商品を生産するのは企業ですから。私の主張は、消費者個人が消費行動を道徳的にすべきということではなくて、サステナブルな企業がそうではない企業を経済的に凌駕するというイメージです。

具体例を挙げましょう。約9年前、私はチューリッヒにあるスイス最古のベジタリアンレストランに行きました。そこの料理は街のどのレストランよりおいしく、それを理由に再訪したくなりました。ベジタブルバーガーのような商品が競合の商品をクオリティで勝れば、顧客もいいほうを選ぶのです。

――たんに環境保護や動物愛護のためではなくて。

それからもう1つ、価格の問題からサステナブルな商品を選びにくい人のために、購入しやすい製品を開発する必要もありますね。

――そういった倫理資本主義を実現させている企業は。

ありますよ。1つは、気候変動に関する世界最大の情報プラットフォームであるスウェーデンのSNS「We Don’t Have Time」。これを立ち上げたイングマ・レンズホッグは、グレタ・トゥーンベリの有名な写真を撮った人物で、気候変動活動家です。

「We Don't Have Time」は、アメリカ中の市、あるいは州で決定権を持つ人たちに情報を提供し、例えばドナルド・トランプが石油業界に有利な政策を推し進めようとした時に、それに反する動きを促したりしています。

企業には「哲学責任者」が必要だ

――ガブリエルさんは、「倫理資本主義を浸透させるには、各企業にCPO(Chief Philosophy Officer=最高哲学責任者)が必要」と提案しています。倫理資本主義においてCPOはどんな役目を果たすのでしょうか。

私自身、セールスフォースやロレアルのほか、多くの企業と仕事をしていて、その中には新進気鋭のドイツのAI企業もあります。(ガブリエル氏が教鞭を執る)ボン大学では州の経済省が後援する「認定人工知能」という倫理的基準に基づいてAI製品を認証するプロジェクトを行っていますが、このAI企業はこれを採用し、信じられないほどの成功を収めています。

採用している大規模言語モデル(LLM)は、ChatGPTと同じシステムですが、違うのはケルン市の行政データのみを使用しているところ。ネットからも隔離されているため、ChatGPTのような「幻覚」は見せないわけです。

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