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「ポスト資本主義」では日本が再び先進国になる訳 マルクス・ガブリエル氏が語る日本の可能性

東洋経済オンライン / 2024年8月21日 10時30分

例えば、「ある地域に保育施設を建設するための提案書を書いてほしい」とシステムに依頼すると、3分で3案を作ってくれる。そして最終的に私たちはそれらの案からいずれかを1つを選ぶ。これは生産性を向上するものであり、自動化するものではないので、誰も解雇されません。CPOは、ここでいうところの倫理的基準を作る際に使命を果たす、という感じです。

――OpenAIからはCPOなど倫理コンサルティングの依頼はないですか?

来年、京都でサム・アルトマンCEOとは会う可能性が非常に高いとは思いますが……。言えるのはそれくらいです。

――倫理資本主義の前提となるサステナビリティについては世代間で感度が違いそうです。

私は8月から京都哲学研究所の顧問として働いていますが、代表理事の1人であるNTTの澤田純会長は若くはないけれども、とても素晴らしく知的な方です。NTTは日本のトップレベルの哲学者、例えば京都大学の出口康夫教授(京都哲学研究所共同理事)とも協力しています。

このほか、経団連では多くのビジネスリーダーと話す機会がありましたが、サステナビリティへの理解をより深めたいという明確な意志を感じました。

――どの企業もポーズではなく、SDGsには本気だと。

政治の道徳的ジレンマを解決するのはビジネス界にあるという認識が、浸透してきたと思います。利益を上げることは、不安定な環境ではできないからです。アメリカやフランスで見られるような政治的不安定の多くは経済的問題に起因しており、中産階級の下層にいる人々は、実際に購買力が低下しすぎている恐れがあります。

その解決は政治にはできない。富の再配分だけでは中間層の底上げは無理で、雇用を増やす必要があります。そのためには、余剰価値を生み出すSDGsに力を入れるしかないのです。

「いいことをした企業」には報酬を

――では、投資家は倫理資本主義にどうかかわるべきでしょうか。

私は代替経済対策の分野で多くの仕事をしてきましたが、ブータンで1年間一緒に仕事をしたカルマ・ウラが考案した「国民総幸福指数」や、イギリスを代表する経済学者、デニス・スノワーの研究である代替経済指標やウェルビーイングの測定の指標を、企業に当てはめて(投資対象として)見ていくことを提案します。

一般的に多くの人は企業の負の部分について、その有害性に対して代償を支払わせるべきだと考えていますが、ポジティブな社会貢献について測定し、その企業に対価を支払うことだってできます。罪ではなく、社会的ウェルビーイングへの貢献に対する報酬制度を考案するのです。

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