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楽天モバイル、競合も驚いた「契約数爆増」の深層 違和感すら抱く「1年で契約200万超」どう実現?

東洋経済オンライン / 2024年8月22日 8時0分

法人から外国人まで――。他社が手をつけていない新たな市場開拓に成功しているようにも見えるが、急拡大している個人ユーザーが将来的に楽天に定着するかどうかは、見極めも必要だ。

KDDIの髙橋社長は自社からの流出について、「データ利用量の少ないSIM単体のユーザーの流動が、少し楽天のほうに出ている感じがする」と述べた。

SIM単体のユーザーとは、端末の購入を伴わない回線のみの契約者を指す。こうしたユーザーの一部は、MNPで短期間に会社の移行を繰り返すことで、端末購入時の割引やポイントなどキャリアが乗り換えを促すために用意したインセンティブを得ているとされる。特典を狙った短期的な乗り換え目的で、楽天と契約した個人契約者も多い可能性があるというわけだ。事業者にとって、特定キャリアに対するロイヤリティ(忠誠心)が低いユーザーは、長期的な収益貢献が期待しづらい。

近年はキャリア間の乗り換え障壁が低くなったことで、こうした動きが顕著になっており、MM総研の横田英明副所長は「iPhoneの発売時などに向けて、他の会社にMNPをして割安価格で購入する目的で、SIMのみ契約をしている人が多い。楽天の新規契約者のうち、どのくらいが(実際に継続利用する)アクティブユーザーか注目される」と指摘する。

楽天モバイルの矢澤俊介社長は決算会見で、「MNPも含めて乗り換えしやすくなっているので、SIM単体の(契約)傾向は増えている」と認めたうえで、「端末を含めたバンドル(抱き合わせの)契約もかなりボリュームがある。SIM単体のみが増えていることはまったくない」とも強調した。

一方、業績面に目を移すと、楽天のモバイル事業は依然として赤字が続く。2024年1~6月期決算では、606億円の営業赤字(前年同期は824億円の赤字)だった。

楽天はモバイル事業について、2024年内にEBITDA(利払い前・税引き前・償却前利益)ベースで単月黒字化を目指している。キャリアの通信利用収入は、主に「契約回線数×ARPU(1ユーザー当たりの平均売上高)」で決まるとされる。会社側は、損益分岐点を超えるには、「MNO回線数=800万~1000万回線」「ARPU=2500~3000円」の双方の達成が必要だと見込む。

すでに700万を超えた回線数は年内の達成が十分視野に入るものの、課題はARPUだ。足元のARPUは2030円程度と、1年前と比べてほぼ同水準にとどまる。利用料が比較的少ないとされる法人向けが増えたことが一因とみられる。驚異的なペースで回線数が伸びているとはいえど、ARPUの急上昇が厳しい状況なのは間違いない。

決算資料から消えた“年内単月黒字化”

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