日本株は次の首相次第で再び停滞する懸念がある 円安と株高の追い風を生かせなかった岸田首相
東洋経済オンライン / 2024年8月22日 9時30分
前回の記事「『日本経済最悪のシナリオ』を意識し始めた日本株」(8月5日配信)では、日本銀行による予想外の利上げと植田和男日銀総裁の発言をうけて、日本株市場が歴史的な急落となり、為替市場では大幅な円高が進んだことをとりあげた。
日本株への期待が「不信感」へと様変わりした
5日の日本株急落は、米国株をはじめ世界的な株価下落を引き起こした。2024年7月初旬までの日本株市場の大幅高は、リスク資産に対する市場の「熱量」を示す1つのバロメーターなので、日本株市場の変調に対して金融市場が身構えたのは当然だった。
株価下落を後押しした要因として、いわゆる「円キャリートレードの巻き戻し」が円高を招いた、と経済メディアなどで解説されている。実際には、定義が曖昧な「円キャリートレード」が円安を後押ししたかは不明である。そもそも、購買力平価対比で大きく円安が進んでいたのだから、1ドル=160円台の円安はいつ修正されてもおかしくなかった、というのが実情だろう。
8月5日がいったんの大底になり、その後日本株市場は反発、ドル円相場も1ドル=141円台からは円安方向に動いている。ただ、日米株価の年初と比べた上昇率(8月20日)をみると、TOPIX(東証株価指数)は約12%と、米国株(S&P500種指数:約18%)をかなり下回っている。2024年初から世界の株式市場をリードしてきた日本株への期待はしぼみ、世界中の投資家が日本株市場に対して不信感を抱く状況に様変わりした。
前出の記事でも述べたとおり、植田日銀総裁の発言をきっかけに、「日本経済にとって最悪のシナリオ」が意識されたことが、日本株急落と大幅な円安修正を引き起こした。日本の通貨当局による円高誘導政策が始まり、日銀が時期尚早な利上げを進める可能性が高まった。
日本の脱デフレへの試みが再び失敗して悪夢が訪れかねない懸念が台頭したのだから、株式市場がこうした反応を示すのは極めて合理的だ。
8月7日の内田真一・日銀副総裁の講演における「金融資本市場が不安定な状況で、利上げをすることはありません」との発言が、植田総裁の「利上げへの前のめり姿勢」とは異なると解釈され、日本株の反発をもたらす材料になったが、これは株価が金融危機時と同様の急落となったことを踏まえれば「至極当たり前」の発言である。内田副総裁の発言を吟味すれば、同氏の利上げへの道筋に関する見解は、植田総裁とほぼ同じだと筆者は考えている。
日銀の性急な金融引き締めリスクが高まっている
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