「脱炭素を通じて社会変革」。先進企業に学ぶ戦略 迫り来る「5つの変化」を、ビジネスの好機に
東洋経済オンライン / 2024年8月23日 9時0分
このような個別企業の取り組みをさらに拡大していくには、再エネ電力がより利用しやすい電力システムのルール構築や、投入する鉄スクラップの品質向上のためのリサイクルを前提とした商品・製品の開発といった他社との協力が不可欠である。
すなわち、既存の製鉄プロセスやバリューチェーンを変えていくことで、2040年頃にはサーキュラーエコノミー(循環経済)が構築され、エネルギー投入量と資源投入量が少ない製鉄プロセスが拡大していくことが展望できる。
この事例は、20の好機のうちの「高付加価値サービスへ転換する」「電化が品質・効率を向上させる」という好機に加え、「再エネ・水素で素材をつくる」「都市が資材の保管庫になる」という取り組みに該当する。
ITを駆使して再エネ電力をフル活用
次に、電力部門におけるストーリーを紹介する。
近年、再エネを使いたい企業が発電事業者と長期契約を結ぶPPA(電力販売契約)が増えているが、発電した電力を自家消費以外には活用できないことが制約となっている。
このような中、アイ・グリッド・ソリューションズでは、ビッグデータとAIを用いた需給予測に基づいて、屋上太陽光発電の余剰電力を他の電力利用者に融通する、余剰電力循環モデルを構築している。これにより、多くの建物において、屋根面積いっぱいまで太陽光発電を載せ、その電力をフル活用することができる。
この仕組みを今後さらに拡大していくためには、小規模分散電源からの電力を既存の送配電線を用いて近隣建物で円滑に利用できるようなルールの整備が必要となる。
このような取り組みが進むと、2035年頃には、小規模分散型電源を束ねて1つの大きな発電所に見立てるアグリゲーションビジネスの大きな発展が展望できる。
さらにその先の2040年頃には、地域の電力需要の多くを地域の再エネで賄うことができるようになり、エネルギーの地産地消ビジネスへの進化が期待できる。
この事例は、20の好機のうちの「エネルギーもデジタルでつながる」「太陽光発電が一気に身近になる」「日本中のまちがずっと豊かに」に該当する。
最後に分野横断的なストーリーを取り上げる。
昨今、企業の成長には、人や企業に関するさまざまな活動をデータ化し、分析情報を基に新たな付加価値を生み出すという、無形資産を用いた事業戦略が重要になっている。
社会課題を起点として、顧客の課題を解決し、成長に貢献する富士通の事業モデルであるFujitsu Uvanceでは、業種間で分断されたプロセスやデータをつなぎ、企業や組織間の協力を活性化させて、これまでにない解決策を導き出そうとしている。
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