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55年連続「ミシュラン三つ星獲得」店が明かす秘密 巨匠ワイズマン監督が撮った4時間の長編大作

東洋経済オンライン / 2024年8月23日 11時0分

――撮影はどのくらいの期間、続いたのですか?

2カ月くらいたったとき、ワイズマンさんから「ありがとう、ようやくいい映像が撮れた。これから1年、僕はトロワグロ・ファミリーと過ごすよ」と言われました。つまり、撮りためた映像を1年かけて自分で編集するということです。

ようやく仕上がったという連絡をもらったとき、なんとこの映画は8時間の長さでした。160時間の映像を8時間にしたけれど、もうこれ以上、削ることはできないと言うのです。

私は料理人なので、フォン・ド・ボーを思い出しました。フォン・ド・ボーというのは、寸胴鍋にニンジンやタマネギ、肉の端切れや骨を入れて長時間煮詰めたもので、肉や野菜の旨味が凝縮されています。

8時間に編集した映画はフォン・ド・ボーみたいにいろんな味が詰まっている。でも、みんな8時間も映画館にいられないから、結局、4時間に編集されました。

――完成した映画をみて、どう思いましたか?

芸術的で真実を描き出している、素晴らしい映画です。レストラン、料理、キッチン、サービスがどのような仕組みで動いているかを包み隠さず見せています。

食材の生産者さん、周りの風景も映っています。私たちトロワグロ・ファミリーとレストランを取り巻くすべての世界を見ていただけると思います。

――撮影時のエピソードを教えてください。

90歳を超えていたワイズマンさんは、精力的に撮影されていました。日が昇ると同時くらいに活動を始めて、夜遅くまで撮影して、寝る前に必ず、その日に撮った映像を全部見返すんです。すごい熱量と作業量です。

ある朝、4時に起きて、ヤギのミルクでチーズを作っている牧場を訪ねました。ヤギ小屋が標高の高い山のほうにあり、早朝に出発したこともあって、ワイズマンさんは途中で具合が悪くなって座り込んでしまったんです。この映画はもう終わりかな、とヒヤッとしましたが、しばらく休むと回復されて、その場でまたカメラを回し始めました。

――ミッシェルさん自身はレストランの仕事の中で、いちばん面白くて夢中になれるのはどんなときですか?

一言で言えば全部です。新しい料理を考える、お客さんと話す、ワインの知識をソムリエから得る、料理人を指導する、スタッフと話し合う。これらすべての瞬間が私は大好きで、日常は楽しいことに埋もれていると言ってもいい。

とはいえ、やはり新しい料理を創作しているときが、いちばん情熱を感じる面白い時間かもしれません。頭を使って一生懸命に考えないといけないので、エネルギーが必要で、非常に凝縮された時間です。

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