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葉っぱアート「88万円」"目利き"が語る価格の根拠 販売を渋っていた作家、「これが最後」と承諾

東洋経済オンライン / 2024年8月24日 17時0分

では「葉っぱ切り絵作品をいくらで販売するのか?」というのが次の問題でした。

リトさんはそれまで、SNSのフォロワーから作品のオーダーがあった時、2万円ほどで直接販売していたそうです。会社勤めをやめていたリトさんにとって、それは貴重な収入源だったのでしょう。

ただ僕はリトさんに、あれだけの緻密さがあって、人を感動させる力のある作品が2万円というのは安すぎる、と言ったんです。それで、1点5万5000円から6万6000円の値を付けさせてもらいました。

リトさんは、「そんなに値段を上げてしまって売れますか!?」と半信半疑だったようです。僕としてはこれでも控えめな値付けだったのですが。

リトさんは「そもそも、無名の僕なんかの個展に人が見にきてくれるでしょうか?」と不安そうでしたが、そんな心配は必要ありませんでした。

僕がリトさんの作品を知って1年の間に、テレビで取り上げられたり、バズったりしてファンが増えていたこともあり、ふたを開けてみると、展覧会には、初日から多くのお客様にお越しいただきました。

もう売りたくない!

さらには、展示された30点の作品は、ほぼ完売でした。その後、リトさんは作品集を出したり、「情熱大陸」を始めとする数々のテレビ番組に出演したりと、大活躍を見せるようになりました。

うちだけでなく、それこそ北海道から沖縄まで、全国各地の商業施設やギャラリーで作品展を開催できるようになっていきました。

けれどリトさんは、2022年8月の丸善丸の内本店ギャラリーでの展覧会を最後に、作品の販売をやめてしまいます。

その理由をリトさんは、「どんなに頑張っても1日1作品しか作れない。売って手元からなくなると、各地の展覧会で多くの方に見てもらいたくても、展示する作品が足りなくなってしまう」

そして「展覧会で展示している作品の横にプライスの札があると、人はどうしても『この作品は○○円なのか』と値段で作品を見てしまう。もっと作品自体をゆっくり楽しんでほしい」と言っていて、その気持ちもわかるのです。

でも僕は、リトさんの作品は、所有してくれる人が増えたほうがいいと思い続けてきました。

展覧会でリトさんの作品を見ると、心が温まって、幸せな気持ちになる。その感情を持ち帰りたい、温かい世界観を手元に置いておきたい、って、人は思うはずなのです。

そして、作品を所有した人が、家族や友人にその温かさや幸せを共有する。アートって、そういう広がり方、伝わり方もあると思うのです。

「88万円」は表現に対する価格

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