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「2歳以下の子供マグロ」食べまくる日本人のヤバさ 大西洋では30キロ未満の漁獲が原則禁止の背景

東洋経済オンライン / 2024年8月24日 12時0分

特に畜養はともかく、小型をそのまま水揚げしてしまうことは、大西洋では30キロ未満の漁獲を原則禁止していることを考えればよくないことがわかるはずです。

クロマグロの親と子供の違い

クロマグロの親と子では、その価値が大きく異なることをご存じでしょうか? 冒頭の写真を見ていただければわかりますが、本マグロと呼ばれる親と、メジマグロと呼ばれる子供では、身の色が異なります。親は鮮明な赤色であり、脂がのった腹部にかけてきれいなグラデーションになっています。

一方でメジマグロのほうは、トロの部分がなく、身の色は親のような鮮明な赤色ではありません。2023年の東京市場での鮮魚価格は親の平均がキロ4125円に対し、メジマグロはキロ1454円と親の価格はメジの約3倍です。

メジマグロの漁獲は、同じ数量を漁獲しても小型のため、かなりの本数になってしまいます。また幼魚は成熟していないので卵を産みません。小型魚を漁獲しても、養殖(畜養)に利用するならまだいいのですが、多くがメジマグロ、ヨコワ、本マグロの子などの名称で流通しています。

ノルウェーと日本で異なる漁獲枠の配分

さて、これから国内でのクロマグロの枠の配分が大きな議題になってきます。ノルウェーのように、沿岸漁業に配慮した国の考え方が参考になります。

下の表はノルウェーでのクロマグロの枠の配分です。そもそも大型の漁船には枠が配分されておらず、15メートル以下の小さな漁船に限っての配分となっています。

一方でわが国の配分は、大中巻き網漁船向けに約半分となっており、沿岸漁業への配慮という観点で、ノルウェーとは大きく異なっています。SDGsの目標14「海の豊かさを守ろう」の中には「小規模・沿岸零細漁業者に対し、海洋資源及び市場へのアクセスを提供する」とあります。

現在の状況は、漁獲枠がタイトなためマグロ漁に出られない一本釣り漁船や、マグロを獲っても水揚げできない漁船があります。また、マグロの釣り船は、月ごとに枠が決まっていて、同じくタイトなために月が替わって釣りが再開できても、数日でクローズになっているケースが続いています。

マグロ釣りに行くのにマグロが釣れないのであれば、キャンセルせざるを得ませんので地元経済にも影響が出てしまいます。

太平洋クロマグロの資源はまだ回復途中

本来必要なことは、マグロが増えたからたくさん獲れるようにしたいということではないはずです。マサバなどの他魚種も同様ですが、さまざまな魚種で小さな魚を獲りすぎてしまう「成長乱獲」が日本の海では起きて、資源に悪影響が起きています。

増えたといっても、太平洋クロマグロの資源は、少しずつ回復している途中にすぎません。日本が主導してマグロ資源の将来を決める位置にあります。まずは、小型クロマグロの枠では保留枠を増やして鮮魚などで流通することを抑制し、畜養に回す分に限るといった配分が将来につながります。

また、枠の配分は大型クロマグロの分も含めて、沿岸漁業者への配分比率を大幅に増やすことです。そして資源量が大西洋並みに増えるようになったら大型漁船への配分を増やすといった、ノルウェーでマダラの枠を配分する際に使っている手法を取り入れる必要があります。そうすれば、資源だけでなく、漁業者間の関係も改善していくことができます。

片野 歩:Fisk Japan CEO

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