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「大量のゴキブリが飛ぶ家」子3人と暮らす母の病 生ゴミの上で眠る子どもたちを思い、片付けを決意

東洋経済オンライン / 2024年8月24日 10時0分

居間にできた生ゴミの山に目をやる。はじめのうちは食べ終わった弁当などを小さな袋に入れて山に向かって投げていたようだが、途中から袋にすらまとめなくなった経緯が見て取れる。

生ゴミから出た水分はだんだんと下に染みていき、ほかのゴミを浸食していく。ゴミの山を掘り返すと、床は泥のようにベトベトになっていた。

ゴミを覆い尽くす「黒い斑点」の正体

生ゴミを手で摑んでゴミ袋に入れると、周りから“ワサワサッ”と小さなゴキブリたちが這い出してきた。床や壁だけでなく天井にもゴキブリが這っている。ゴミをかき分けるたびに、空中にゴキブリが飛び回った。

テーブルの上にあった紙コップをどかすと、紙コップの周りを黒い斑点がふち取っている。あらためて家の中を見てみると、テーブルの上、空き缶、空容器などあらゆるものが黒い斑点をまとっている。上から大量の土をばらまいたかのようである。

「これ、全部ゴキブリの糞なんですよ」

文直氏はそう言ったが、あまりにも量が多すぎて信じられなかった。

このゴミ屋敷で子どもたちはどうやって暮らしていたのだろうか。1人はビールの空き缶が転がっている子ども部屋で眠っていた。ベッドのマットレスはボロボロに擦り切れ、ここにもゴキブリが棲みついている。

もう2人は居間のゴミの海の真ん中にできたくぼみに布団を敷き、母親と丸まりながら3人で眠っていた。

このシングルマザーも例外ではなく、とくに生ゴミが目立つゴミ屋敷には酒の空き缶がたくさん捨てられている傾向があるという。現場で作業をしていた文直氏の弟・信定さんが話す。

「不幸が続いたり、精神的につらいストレスがあったり、職場の環境や近隣住民との関係が上手くいかず、お酒に逃げてしまう。飲んでいろいろ忘れたい、飲んで楽になりたいというのはあるかもしれない。酒で無気力になってしまい、“もうどうでもいい”と思ってしまった時期があったと、今回の依頼者さまもおっしゃっていました。そこから(生活が)狂い始めてしまったのかもしれません」

家が生ゴミだらけになってしまった理由

一体、この家に何があったのか。夫と離婚後、シングルマザーとして3人の子どもとこのゴミ屋敷で暮らしてきた母親が語った。

「4年ほど前に父が亡くなったのですが、死に目に会えなかったんです。そこで気持ちがドンと落ちてしまいました。ただ、そのときは今ほど部屋は散らかっていませんでした。

その1年後に今度は妹が亡くなったのですが、遠方に住んでいることもあって、また死に目に会えませんでした。そこから、もう何もする気力がなくなってしまいました。家が散らかり出すと仕事もどんどん上手くいかなくなり、人間関係も悪化し、近所の人に会うことすら怖くなっていきました」

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