1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

顧客満足度1位のホテルが実施している研修の中身 緻密なマニュアルはなく、スタッフの8割がアルバイト

東洋経済オンライン / 2024年8月26日 17時0分

この点においても、優秀者と標準者では違いが出ました。優秀者の場合、お客様が入店された瞬間(フロントにいて、お客様がエントランスに入ってきた瞬間)に、表情・しぐさ・服装、そして荷物までを確認していました。

荷物の大きさを見て、一泊の予定なのか、連泊の予定なのかをある程度予測します。その日、たまたま連泊の予定のお客様が少なければ、どのお客様なのかを推測することも可能です(優秀者は事前に、かなり細かく予約情報を確認している)。

それによって、出迎えの一言にも、連泊のお客様によく使うフレーズを使うようにするとか、館内案内のときにはコインランドリーの説明をしっかりしようといった、そのお客様への接客ポイントを自分なりに組み立てていました。

ワークショップでおもてなしスキルを向上させる

優秀者は、お客様がおかれている状況を把握しようと努め、お客様の様子を細かく観察して、一つひとつの情報からお客様の理解へとつなげていき、状況に応じた臨機応変な対応で接客を遂行しようとしていることがわかりました。

とても大切なことだとはわかっても、それをすべてのスタッフに一朝一夕に課することができるかといえば、非常に難しいことのように思われました。

しかし、じっくりと時間をかけて、ものの見方、捉え方、そして考え方を身につけてもらうことは可能だと考え、ワークショップという形でお客様観察について身につけてもらうようにしました。

お客様役が入店されてから、フロントでチェックイン手続きをすませるまでの動きを、寸劇のような動画にして、数名のワークショップ参加者がそれを見て、どこに注目し、何を考えたのかをディスカッションするワークショップです。

目的は、「こんなお客様のときには、こうしてほしい」というような、接客サービスを型にはめるような研修ではなく、あくまでも広い視点でお客様の様子を観察することの重要性を理解してもらう研修であり、そのためのワークショップという位置づけでした。

実際、同じ動画を一緒に見ているにもかかわらず、人によって注目したポイントも違えば、同じポイントに注目しながらも、違う感想を持つなど、まさにスタッフによって千差万別でした。

こうしたワークショップを2~3回やった程度では、着実に、そして適切にお客様の様子を観察できるようになり、それによってサービスレベルが飛躍的に向上するということはないかもしれません。

しかしながら、このワークショップを通じて、同じものを見ていても、着目ポイントも、そこから読み取る情報も、人によって違うということを実感できます。

ワークショップを通じて気づきが生まれる

そこに気づくと、自分のものの見方が必ずしも唯一絶対のものでなく、また、得た情報をどう解釈するかも一様ではなく、そこにはバリエーションがあって、もしかしたら、そのバリエーションのほうに正解があるのかもしれないと、想像力を働かせることができるようになります。気づきが生まれるといってもいいでしょう。

優れたおもてなしを実践するためには、その気づきこそが大事なのだということを、このときの調査は私たちに教えてくれました。

そして、その知見を基に実施している「観察力・想像力を養う教育プログラム」というワークショップは、着実にスタッフのおもてなしスキルの向上に役立っています。

原 良憲:日本学術会議連携会員

嶋田 敏:サービス学会理事

星山 英子:スーパーホテル経営品質本部執行役員

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください