「人はなぜ老いるのか」物理が導き出した答えは? 「水とインク」の実験から時間の流れを科学する
東洋経済オンライン / 2024年8月28日 17時0分
しかし、当然ですが、インクが再び集まるというのは現実世界ではまず起こりませんよね。これはなぜかというと、ランダムに衝突が行われるとき、インクが集まって見えるパターンに比べて、水全体がピンク色に見えるパターンのほうがはるかに多いからなのです。
単純化して考えてみます。たとえば、4×4に分かれた正方形で、インクの分子が左上に4個、それ以外のところに水分子が12個あるとします。そして、時間の経過とともに、隣り合った分子がランダムに入れ替わっていくとします。
しばらく時間が経つと、インクの分子がばらばらに分かれていくはずです。このとき、理論上はスタートと同じくインクの分子が4個固まった状態に戻る可能性もありますが、それよりもインク分子がばらばらに分かれる、つまり、ピンクに見える方向に進む確率が圧倒的に高くなります。
実際のところ、水の入った水槽には、12個どころではない水分子が存在しているので、赤いインクの分子が1カ所に集まる確率はもっと極端に低くなります。このように、統計的に見たときに、進みやすい方向に進んでいくというのが「時間の方向性」を表していると考えられるのです。
この概念を老化に当てはめると、体が若いままでいるよりも、老化した体に対応するパターンのほうが圧倒的に多いから、人間は必ず老いていくと考えられます。
太陽や星も同じです。超新星爆発を起こすなどの最期を迎える方向に向かっていくほうが、対応するミクロのパターンが多いのです。
ということは、こうした動きを制御して、無秩序に向かっていく方向とは逆の方向へと進ませることができれば、実質的に時間を巻き戻せるということです。
ただし、これをミクロなレベルで完全に制御するのは極めて難しいため、実際にはほとんど不可能だというだけなのです。
エントロピーと対を成す概念がエネルギーです。エネルギーは「保存の法則」によって、常に保存されています。
たとえば、ボールを押し出して転がすといつかは止まりますが、これはエネルギーが消滅しているわけではなく、摩擦によって、運動エネルギーが熱エネルギーに変換されているだけであって、エネルギーの総量は変わりせん。
なので、「エネルギーを節約しましょう」というのは、物理学的に見るとおかしいのです。エネルギーの総量は変わらないので、節約も何もないわけです。
ただし、エネルギーの総量は変わりませんが、エントロピーは増えていきます。エントロピーが小さい状態だと、エネルギーは秩序のある形で存在しているということなので、より利用しやすくなります。
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