音楽配信の隆盛でまだまだ変わる音楽産業の未来 人工知能とVR機器が切り拓く音楽体験の未来像
東洋経済オンライン / 2024年8月28日 12時30分
エンタメ産業は、その時代のテクノロジーによって業態が変容してきた。典型的な例は音楽業界だ。音楽業界が過去8年にわたって成長を続けている背景には、スマートフォンやワイヤレスオーディオ、デジタル音楽配信サービスといったテクノロジー製品、サービスの普及がある。
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CD販売の急激な落ち込みから衰退期にあった音楽産業が、デジタル音楽配信サービスで救われたというストーリーは、すでに承知の方も多いだろう。
しかし、産業規模がCD最盛期を超え、そのビジネスモデルや今後の成長領域などは大きく変化している。さらに、音楽産業の構造変化はオーディオ機器の売り上げも急速に伸ばした。
ワイヤレスイヤホン、ワイヤレススピーカー市場の隆盛は、音楽産業の構造変化がもたらしたものだが、さらなる音楽産業の変化に伴ってオーディオ機器の市場も大きく変容、成長していく可能性がある。
音楽産業とテクノロジー
少し歴史を振り返ってみよう。
音楽を中心とした事業の始まりは、言うまでもなく“実演”が中心だった。録音技術がなかったからだ。優れた楽曲を創作する音楽家は、自らが創作した音楽を実演しながら街を巡る旅に出て稼ぐこともあった。
しかし、印刷技術が発展すると、音楽は楽譜として”出版される”ものとなる。現在でも”音楽出版”は音楽産業における中核にある。
その後、録音技術が生まれると演奏を録音した媒体を販売するようになる。これが”録音原盤事業”で、アナログレコードからCDにかけての”アルバム形式でのパッケージ販売”という事業形態を生み出した。それと同時に録音原盤を、より良い状態で再生するための機器、つまりオーディオ産業が生まれた。
CDが録音原盤の販売・流通を身近なものにすると、音楽産業は急速に伸びたが、ご存じの通り1999年をピークに急速に縮小した。日本ではCD販売が根強く音楽事業の柱であり続けたが、グローバルでのCD売り上げ減少は壊滅的なものだった。
それはCD原盤のデータをMP3技術で圧縮し、ネットで共有するサービスが広がったことが引き金だ。1999年、CDを中心とした物理メディアのパッケージ販売はおよそ220億ドルだったが、10年後の2009年には100億ドルを下回った。
iTunes Storeをはじめとしたダウンロード販売はこの落ち込みを補うことはできず、音楽産業全体としては音楽ライブなど”実演”への回帰が進んだ。実演への回帰は、現在も流れとして大きくなっている。
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