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音楽配信の隆盛でまだまだ変わる音楽産業の未来 人工知能とVR機器が切り拓く音楽体験の未来像

東洋経済オンライン / 2024年8月28日 12時30分

一方で録音原盤の事業も音楽配信サービスの成長で、以前を超える規模に復活し、さらに伸びようとしている。2022年、録音原盤の販売はグローバルで約286億ドルに達し、前述したCD全盛期の1999年を大きく超えている。

写し鏡の”音楽とオーディオ”

視点を少し変えてみよう。

実演だけでは小さな市場しか生み出せなかった作詞家・作曲家は、出版技術によって楽譜販売による印税を得られるようになった。さらに録音技術によって実演家も、演奏そのものを複製、より多くの人に楽しんでもらえるようになり、音楽は産業へと発展した。

この”録音原盤”をめぐる産業の発展は、写し鏡のように発展と衰退が進み、業態の変容も(少しばかり時間差はあるものの)起きてきた。

アナログレコードとともに急速に伸びたオーディオ市場は、機器そのものの小型・低価格化に加え、ソニーのウォークマンを発端に再生機器のパーソナル化が進んだ。CDの登場で一定水準のオーディオ体験が手軽に得られるようになると、カジュアル市場と高級機市場の両極に分離し、高級オーディオ機器は新規ユーザーを獲得できないまま高齢化が進み、並行してCD販売不振の時代を迎えると、オーディオブランドは、さらに先鋭化して既存ユーザーに迎合せざるを得なくなった。

高級オーディオブランドも音楽配信サービスへの対応など、音楽産業の変化に追従しつつあるが、オーディオ産業全体を見渡すと”スマートフォンとストリーミング配信”への移行に伴う変化を飲み込みつつ、売り上げ規模の大きな成長をもたらしている。

オーディオ機器市場は極めて細分化されており、正確な機器販売の規模を示す数字は見つからないが、音楽ストリーミングの成長とともに大きく成長してきた2015年以降、ワイヤレスイヤホン・ヘッドホン市場の急成長とスマートスピーカーの普及で大幅に伸長したとする分析は共通している。

2000年から2010年、すなわちCD衰退期にオーディオ産業全体の売り上げがほとんど伸びなかったように、音楽産業の変化はオーディオという製品ジャンルに影響を与えている。

テクノロジーによる本格的な業態変容はこれから

これらは”現在”についての分析でしかない。

市場予測ではワイヤレス化による市場拡大はまだまだこれからで、少なくとも2030年までは上昇していくと言われている。例えば、昨今の大規模言語モデルによるAIの進化は、これまでは単なる音声操作+アルファにとどまっていた音声アシスタントに、人工知能的な要素が加わることを意味している。

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