大阪メトロ野江内代、地味な「難読駅」の誕生秘話 谷町線の開通記念碑が物語る地元の"悲願"
東洋経済オンライン / 2024年8月28日 7時30分
「とくに、読みに『ん』が入るというのが難しいですよね。私もお客様に聞かれたことがあります」と話すのは、同駅の駅長を務める本並康裕さん。
とはいえ、周辺に観光地や大規模商業施設があるわけでもなく、駅を利用するのは地元の人たちが大半。名前について気にすることはほとんどないという。「ただ、難読駅名としてメディアで取り上げられているのを時々目にしますし、その時はちょっと嬉しく思いますね」。
駅長に聞く「どんな街?」
本並さんは東梅田副管区駅長という立場で、谷町線の中崎町―関目高殿間(天神橋筋六丁目駅を除く)を担当している。若者や外国人観光客の多い中崎町駅や周辺にマンションが立ち並ぶ都島駅と違い、ここは“大阪の下町”という言葉を連想させる街並み。梅田エリアから10分弱という立地ながら、どこかのんびりとした雰囲気が漂う。
「顔なじみのお客様も多く、朝夕の挨拶だけでなく、休日に『ちょっと遊びに行ってくるわ』と声を掛けてくれることもあります。私が以前に勤務していた梅田駅などにはない、アットホームな雰囲気がここにはあって、お客様と接する楽しさややりがいを感じています」
駅から東へ10分ほど歩いたところにはJR野江駅が、さらにその先には京阪の野江駅がある。少し距離があるため、乗り換え客はほとんど見られないという。「住んでいる皆様は目的地に合わせて使い分けておられるようです」。
野江内代駅の乗降人員は約1万1000人で、谷町線の天王寺駅以北では最少。同線で最少の田辺駅(約9000人)と比べても、それほど変わらないレベルだ。
駅の構造も、改札口は1カ所、地上に通じる出入り口は道路を挟んで東西に1カ所ずつと、いわば“最小構成”。谷町線の列車は6両編成だが、ホームは将来の増結を見据えて8両対応となっており、使われていない部分はほかの駅と同様、柵で区切られている。
駅構内に漂う昭和感
近年にはトイレのリニューアルが行れたものの、ホームや改札口付近は開業当時の雰囲気を残していて、いかにも『昭和の地下鉄駅』といった感じだ。
「私は、東梅田駅を拠点として業務を行いながら各駅を巡回しています。各駅とも個性があり、スタッフもお客様が快適にご利用いただけるような工夫をいろいろとしていますので、そういった点にも注目していただきたいです」
ところで、野江と内代はもともと2つの村の名前だった。明治時代に関目村と共に合併して東成郡榎並村(後に榎並町)の大字となり、1925年には大阪市に編入されて東成区に。1932年に東成区が分割されると、旭区の区域となった。ここまでは同じ道を歩んだのだが、1943年に大阪市が22区制を敷いた際、野江と関目は城東区、内代は都島区と袂を分かち、現在に至る。
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