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西島秀俊の「ハリウッドデビュー作」がすごかった 配信元の「Apple TV+」の認知度は低いけれど良作

東洋経済オンライン / 2024年8月28日 11時30分

京都舞台なのに、ラーメン屋が「一蘭」

欧米が作る日本を題材にした作品はとかく、日本への間違ったイメージが先行しがちで、日本人には違和感が拭えないことも否めない。

昨今は、真田広之がプロデュースした『SHOGUN将軍』が誤解を埋めるべく尽力しているように感じるが、『サニー』の描く日本・京都はロボットの活躍する近未来とはいえ、やっぱりちょっとヘンテコである。

京都ロケも行っていて、おなじみ五重塔から、祇園の町並みや1960年代の近代建築を代表する国立京都国際会館(大谷幸夫設計)でのロケも敢行しているのだが、夜の祇園が歌舞伎町とごっちゃになっていませんか? というようなところもあって気になるといえば気になる。ラーメン店が福岡に本店がある一蘭であるのもあえてなのか。

ただ、『ブレードランナー』(1982年)リスペクトのような、近未来東京ならぬ近未来京都のような、レトロフィーチャー的なセンスは悪くはない。銭湯やあやしいガジェットショップなどは絵になるし、マサの乗ったバイクがサイドカーなのは無駄にかっこいい。YOUの着物姿もエキゾチックである。

渥美マリの『好きよ愛して』は毎回聞いているとなんだかハマるし、なつかしすぎる『子連れ狼』のイメージソング(「しとしとぴっちゃん」のフレーズが印象的)などがかかって、なんともいえないノスタルジックなムードを醸す。登場人物たちの造形にはコーエン兄弟やデビッド・リンチのようなセンスも感じる。

マサの妻・スージーを演じる俳優は馴染みがないが、日本だと水川あさみが演じそうな雰囲気で、スージーとバディのようになる見習いバーテンダーのミクシー(シンガーソングライターのアニー・ザ・クラムジー)もやっぱり馴染みはないが、見ているうちに慣れてくる。

「Apple TV+」の認知度は低いが…

なにより、先述した西島が、いつの頃からか身につけた、日本映画やドラマで見る公安刑事的な寡黙で無表情で物静かな人物しぐさとは違う、表情を生き生きと大きく動かしている場面もあって、新鮮なのだ。おそらく、日本では限界のある表現を海外に世界を広げたときに出すことができるのではないだろうか。

見るほうとしても、違う視点を提示される喜びはある。京都への視点も、マサたちが暮らす京町家の捉え方など、新鮮ではある。こんな家に住みたい。

馴染みがないといえば、最も問題なのは、配信プラットフォームがApple TV+であることだろう。NetflixやAmazonプライム、U-NEXTなどと比べるとまだ浸透していない。先日、韓国ドラマ好きの行きつけの美容師さんと話したときもApple TV+の認識がなかった。

だからこその西島、國村、YOU、ジュディ・オングに京都、見やすいダークミステリーなのだと思うのだが。なにより、1話が1時間ない、35分くらいなので見やすい。15分じゃ短いし1時間じゃ長い。ほどよい感じで続きを楽しみに筆者は見ている。

昨今、俳優もスタッフも続々と地上派ドラマから配信ドラマへと軸足を移していて、見たいドラマの数は増える一方である。俳優にとっても海外の視聴者との出会いによって自身の可能性を広げる絶好のチャンスであろう。

木俣 冬:コラムニスト

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