米民主党大会で感じた「日本の総裁選」との決定差 アメリカで求められ、日本で求められないもの
東洋経済オンライン / 2024年8月28日 8時40分
興奮の渦に包まれたアメリカの民主党大会が終わり、2024年大統領選挙の「熱い夏」は過ぎた。11月の投開票日まで残すところ2カ月だ。一方で、日本では9月に自民党総裁選挙がある。「ポスト岸田」が決まる節目である。
ところが、日米2つの首脳選挙を見比べると、日本の首相候補は、演説や答弁を通して国民を共感させる「コミュニケーション力」はまったく未知の顔ぶれだ。一方で、ミシェル・オバマ元ファーストレディ、民主党指名候補となったカマラ・ハリス副大統領などは民主党大会で、人々の心を揺さぶり、総立ちにさせた。
ハリス氏は今後の有権者との対話や大統領候補討論会に向けて、さらに特訓を受けている。アメリカでこうした様子を見ていると、日本では政治家が一定の能力を持たずとも、首脳になれるのかと思ってしまう。
民主党大会の「クライマックス」
8月22日夜、民主党大会最後の日、大統領指名候補のカマラ・ハリス副大統領は、受諾演説を行った。大会のクライマックスだ。
「私の全キャリアを通じて、私にとってのクライアントは、1つしかない。それは人民だ」
「この選挙によって、私たちの国家は、貴重な、またとないチャンスを与えられている。それは、辛い、皮肉に満ちて、分断的な過去から前に動き始めるチャンスだ。前に進む新たな道だ。それは、どんな政党や派閥に属しているということではなく、アメリカ人として進むべき道だ」
「最も高い志に基づき、私たちを団結させる大統領になる。人々をリードし、耳を傾ける大統領になる」
短いセンテンスで、単語の前後に十分な間をおき、強調する部分は声を枯らした。大げさではない手振りを加え、演説に渾身を込めた。そもそも大統領の影になりがちな副大統領であったために、彼女がこれだけ必死に演説をする姿は見たことがない。
それだけに、今回の演説だけで「presidential(大統領らしい)」とメディアや国民に言わせなくてはならない。おそらく相当の練習をしたに違いない。しかも、バイデン大統領が選挙戦から撤退を発表し、彼女を候補にした7月21日からわずか1カ月で、影の薄い副大統領から大統領候補への変身を強いられた。
「自信に満ちた、信念がある、大統領らしい」演説だったと翌23日のニューヨーク・タイムズ。これは、ハリス氏ほか選挙陣営が最も欲しており、膝を打って喜んだ見出しだろう。
受諾演説の「大失敗」は許されない状況だった
ハリス氏は、アメリカ史上で初めての黒人として副大統領になった。11月に勝利すれば、初の女性大統領になるだけでなく、南アジア系としても初の大統領になる。つまり、歴史を生み出す人物として期待され、受諾演説での失敗は許されない状況だった。
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