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「ブラック研修」を否定しきれない20代男性の本音 研修は朝6時から深夜1時までで、休憩はなし

東洋経済オンライン / 2024年8月30日 13時0分

いわゆる“ブラック研修”で理不尽に罵倒され、「周囲の期待にこたえよ」という価値観を刷り込まれたヨウヘイさん。厳しいノルマや異様な長時間労働の末に早々に退職したが、今も「あの研修を受けてよかったと思うこともあります」と振り返る(筆者撮影)

現代の日本は、非正規雇用の拡大により、所得格差が急速に広がっている。そこにあるのは、いったん貧困のワナに陥ると抜け出すことが困難な「貧困強制社会」である。本連載では「ボクらの貧困」、つまり男性の貧困の個別ケースにフォーカスしてリポートしていく。

入社前の研修で行われた「大声バトル」

「ぐおぉぉ!! おはようございますっっ!」「おーはーよーご・ざ・い・ま・すぅぅぅ」

関東近郊の人里離れた山奥。ぽつんと建つ合宿所に隣接する空き地で、40人ほどの若者が輪になっている。その中の2人が中心に進み出て大声を張り上げ合う。すかさず講師と思われる男が「がんばっていたと思うほうに手をあげろ!」と怒声を放つ。

若者たちの挙手によって勝敗がつくと、男が“敗者”に向かって立て続けに罵声を浴びせる。「会社の金を無駄にしてんじゃねぇ!」「もう学生じゃねーんだぞ!」「だからお前はダメなんだ!」。

最初はためらい、恥ずかしがっていた若者たちの「おはようございます」は次第にエスカレートしていく。息が続く限りわめき続ける人、泣き崩れるように叫ぶ人、地面をのたうち回りながら絶叫する人――。

名付けて「大声バトル」。異様な光景は都内のある会社による入社前の研修の一場面だ。3泊4日の期間中、バトルは何度も繰り返された。5年ほど前にこの研修に参加したヨウヘイさん(仮名、29歳)が振り返る。

「ほとんどの人は怒られる恐怖からやっていました。そういう僕もこのバトルで1位を取ったんですけど……」

ヨウヘイさんによると、研修は、数社の中小企業が合同で社員研修を担う会社に依頼して実施。合宿所に着くと4、5人のチームに分けられた。和気あいあいとした空気が一変したのは、5分以内にチームの名前やスローガンを決められなかったことに対し、研修を主催する会社の社員から突然「ふざけんじゃねー!」と怒鳴りつけられてからだという。

研修では、レゴブロックの組み立てやパズルなどの課題も出された。そして1位以外のチームは「社会に出たら1位じゃないと意味ないんだよ!」「この恥さらしが!」と罵倒される。

研修は朝6時から深夜1時までで、休憩はなし

また、かつて流行した「マルモリダンス」の振り付けの抜き打ちチェックもあった。研修は朝6時から深夜1時までで、休憩はなし。睡眠時間を削って練習するしかない。明け方近くまで、かわいらしいダンスを能面のような表情で踊る若者たちの姿が合宿所のあちこちで見られた。

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