中国リチウム大手、トルコに電池工場建設の思惑 贛鋒鋰業、トルコ政府主導の再エネ推進に期待
東洋経済オンライン / 2024年9月3日 19時0分
中国の民営リチウム大手の贛鋒鋰業(ガンフォンリチウム)はトルコに進出し、太陽光発電や風力発電の電力を一時的に蓄える「蓄電システム」向けリチウムイオン電池の現地生産に乗り出す。
同社は8月17日、電池子会社の贛鋒鋰電科技(ガンフォンリエナジー)がトルコの電池メーカーのイギットアクと合弁会社を設立し、総額5億ドル(約738億円)を投じて年間生産能力5GWh(ギガワット時)の電池工場を建設すると発表した。なお、合弁会社の出資比率については明らかにしていない。
蓄電システムに大きな潜在需要
イギットアクのウェブサイトによれば、同社はトルコ最大の鉛蓄電池メーカーであり、輸出やリサイクルも手がけている。一方、贛鋒鋰電科技は固体電解質を用いるリチウム金属電池、液体電解質を用いるEV(電気自動車)向け車載電池、蓄電システム向け電池などの開発に取り組んできた。
財新記者の取材に応じた関係者によれば、贛鋒鋰業がトルコへの進出を決断した背景には、蓄電システム向け電池に対する同国の潜在需要の大きさがある。トルコ政府は再生可能エネルギーの導入を積極的に推進しており、蓄電システム市場の急拡大が見込まれるという。
トルコ政府が2022年に策定した「国家エネルギー計画」は、2035年までに太陽光発電の設備容量を2021年の5倍以上に、風力発電を同3倍以上に引き上げる目標を掲げる。それに先立ち、トルコのエネルギー市場監督局は、国内の蓄電システム市場を2021年に自由化した。
その一方、トルコ政府は2024年1月に(中国の電池メーカーが得意とする)リン酸鉄系のリチウムイオン電池、電池モジュール、蓄電システムの輸入に30%の関税を課す計画を発表。海外の電池メーカーに対し、トルコへの直接投資を検討するよう促している。
欧州市場への輸出も視野に
トルコでのビジネスチャンスに注目し、現地進出を決断した中国企業は贛鋒鋰業だけではない。電池メーカーの孚能科技(ファラシスエナジー)は、トルコ企業との合弁で車載電池の工場を建設し、2023年3月に稼働させた。億緯鋰能(EVEエナジー)も2024年1月に進出計画を発表した。
トルコは地理的にヨーロッパに近く、EU(欧州連合)と関税同盟を締結している。中国メーカーがトルコに工場を建設すれば、その生産能力をヨーロッパ市場への輸出に振り向けることも可能だ。
孚能科技のトルコ工場は、車載電池のモジュールとパックを年間6GWh生産する能力を持つ。同社はそれをヨーロッパ、中東、アフリカ、南アジアでの市場開拓に活用していく計画だ。
(財新記者:廬羽桐)
※原文の配信は8月19日
財新 Biz&Tech
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