「EV逆風下の最高益」中国BYDの強さを読み解く PHVを積極投入、高いコスト競争力と開発力誇る
東洋経済オンライン / 2024年9月3日 8時40分
また部品サプライヤーに対して調達先の固定化を避け、競争を促すことで、常に最も安い部品調達先を確保する調達方針を取っている。BYDが強気な姿勢を取れる背景には、高い成長力でサプライヤーを惹きつけ、優位な立場がある。
BYDは高いコスト競争力を武器に低価格で高性能なPHVの商品ラインナップを充実することでエンジン車メーカーからシェアを奪っている。中国乗用車市場に占めるBYDのシェアは2019年の2.2%から今年1~6月には14.1%へと大きく上昇した。
一方、強さばかりが語られるBYDに死角はないのか。決算データの中でも浮かぶネガティブな要素は3つある。
1つ目は自動車・部品事業の成長が鈍化していること。
2024年1〜6月の同事業の売上高は9%増だった。過去2年間の同事業の売上高平均伸び率(1.6倍)から急ブレーキがかかった。前述した通り、この間の新車販売台数が28%増であり、平均単価が大きく下がっている。果敢な値下げは諸刃の剣といえる。
2つ目は在庫回転日数の長期化だ。
部材の在庫が何日間で入れ替わっているかを示す在庫回転日数は、2023年の72日から2024年1〜6月は78日へと上昇している。ここからも中国NEV市場全体の減速がBYDに影響を与えていることがわかる。
3つ目は営業キャッシュフローが悪化していること。2024年1~6月のキャッシュフローは前年同期の819億元から141億元へと、約83%減少した。サプライチェーンの垂直統合に伴う人件費、部材費の増加が主な原因となっている。
消耗戦に耐え、ホンダ越えへ
中国の新車市場では熾烈な価格競争が繰り広げられており、すでに始まっているEVメーカーの淘汰はさらに加速する見通しだ。他方、消耗戦に耐えて持続的革新に取り組んだメーカーが真の強者になっていく。
BYDはサプライチェーンの競争力を生かし、コストパフォーマンスでグローバル競争に攻勢を仕掛けている。アメリカ・EUが中国のEVシフトを警戒する中、BYDは今年、タイやウズベキスタンで工場を稼働させるほか、インドネシア、ハンガリーやトルコ、ブラジルでEV工場を建設している。
海外市場での販売台数は2024年1~6月に2.7倍の20.3万台となり、通年では50万台に達する見込みだ。この勢いなら、今年の販売台数でBYDが自動車世界7位のホンダを超える可能性は十分にある。
湯 進:みずほ銀行ビジネスソリューション部 上席主任研究員、上海工程技術大学客員教授
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