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世界で「民主主義」が危機を迎えている根本理由 「民主主義が民主主義を殺す」時代になっている

東洋経済オンライン / 2024年9月3日 14時0分

21世紀における国民創造のために不可欠な物語をどうやって再構築すればいいのかということだけではなく、国民創造のために歴史が動員されることを拒否することも含めて妥協が困難な価値をめぐる争いになっているのです。

奴隷制度は19世紀に廃止されました。20世紀前半には女性参政権も実現しました。ところがこれらは人間を奴隷とそれ以外に分けること、男と女に分けることといった、人種主義的な発想に対する反省から起きたものではなく、単に経済的な利益や戦争遂行能力を高めるための要求から行なわれただけであり、「ブラック・ライヴズ・マター運動」の高揚やフェミニズムの運動が続いていることは、19世紀以来の国民国家建設の課題がまだ残されていることをあらわしています。

当然ながら「富の分配」をめぐる問題が解決したわけではありませんが、「価値の分配」が政治の大きな焦点になる中で国民国家としての同質性を保つことが難しくなっているのが現在といえるでしょう。

1950年代以降はソ連側の社会主義に対抗して、「民主主義のほうが素晴らしいよ」(内実はどうあれ)というメッセージが世界中に広がり、民主主義が拡大していきました。ところが、我々の社会は大きく変化しました。

その背景には1990年代から進んだ第3次産業革命、そして現在進行中の第4次産業革命があります。加えて経済のグローバル化が進展して一国の経済活動が世界の経済状況に連動するようになり、生活が苦しくなったと感じている人たちにしてみれば、民主主義にはさほど意味を感じないかもしれません。こうした変化に対応することと民主主義はあまり関係ないと考えられるからです。

民主主義に代わって台頭する「権威主義」

代わって台頭してきているのが、権威主義国家の典型例ともいえる、選挙独裁ですらない中国です。21世紀に入って一番経済成長を遂げたのが中国ですから、その影響は大きいものがあります。人権問題を理由に欧米からの援助が得られない国に中国が手を差しのべれば、自然と中国的な政治手法や政治的価値観が広がりを見せていくでしょう。

もう1つが選挙独裁の典型例であるロシアの存在です。イギリスのブレグジットや、2016年のアメリカ大統領選でのトランプ当選をめぐって、ロシアがインターネットを使ってフェイクニュースを流し恐怖を煽り、結果にそれなりの影響を与えたことが問題になりました。まさに政治体制の違いで対立を見せていた冷戦時代に戻っているかのようです。

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