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今さら聞けない「ポピュリズムが台頭する」なぜ そもそもポピュリズムは「悪」なのか?

東洋経済オンライン / 2024年9月6日 18時0分

次にポピュリズムを名乗る運動が広まったのはラテンアメリカでした。ラテンアメリカは広大ですが、産業構造や人口構成にほとんど違いがないために、多くの国々で同時多発的な政治運動が展開されます。

19世紀前半に独立して以来、経済的には一次産品の輸出が主な産業となっています。政治的にはプランテーション地主が権力を独占する寡頭支配体制が続いていました。1930年代に世界恐慌がラテンアメリカにまで広がると、農産物価格の下落から農民の生活が苦しくなります。これを背景としてポピュリスト政権が各地に成立します。

このアメリカ合衆国及びラテンアメリカのポピュリズムは教科書的にいえば、必ず掲載されているものなのですが、悪いものであるといったイメージはさほど浮かんできません。むしろ弱者の味方という良いイメージさえあります。

ただし、ポピュリズムには民主主義の持つ相反する2つの要素が兼ね備わっていることは踏まえておかなければなりません。この相反する2つの要素については『ポピュリズムとは何か』に書かれてあることをぼくがまとめたものです。

2つの「民主主義」

民主主義には、ただの民主主義と自由民主主義の2種類があって、前者は直接民主主義的な志向を持ち、民衆による権力の集中といった側面があり、後者は間接民主制、法の支配、権力の抑制といった側面があります。

自由民主主義の観点から見るとポピュリズムは非常に危険な運動です。権威主義へ道を開くものに見えます。それは、

(1)問題解決のために手続きを無視する
(2)多数派原則を重視して少数派の主張が無視される
(3)司法や官僚制といった非民主的な制度や権限を制約してその時々の気分に流される政治になる
(4)人々を動員するために敵味方の二分法をとるあまり、社会に亀裂が生まれる

ポピュリズムが民主主義を否定していないからこそ、民主主義を脅威にさらすことにつながる恐れがあるということです。ところがただの民主主義の観点から見ると、ポピュリズムは民主主義を活性化させるのではないかともいえます。

(1)政治から排除された人々の政治参加を促す
(2)既存の枠組みにとらわれない新たな政治・社会的なまとまりをつくり出し政治の革新が可能になる
(3)問題を個人で解決するのではなく、政治の場に引き出すことで「政治」そのものの復権を促す

20世紀から21世紀にかけて農業社会から工業化社会へ、さらにはポスト工業化社会へと産業構造が変化する中で、農業組合や労働組合に組織されない人々が急増していきました。特定の支持政党を持たない無党派層も増えています。こうした人々へアプローチするのがポピュリズムであるとすれば、確かにポピュリズムは民主主義を活性化することにつながる気もします。

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