世界でただ1人「希少種ゴキブリ研究者」の実態 沖縄で採集しお持ち帰り、でもゴキアレルギー
東洋経済オンライン / 2024年9月7日 19時0分
そして、土が入っているというのは噓ではない。ゴキブリは土を入れた容器に入っていたのだから。土の中にゴキブリがたまたますべての容器に混入していただけである……という詭弁をこねくり回したくなるが、当時、咄嗟に遠回しに噓をついてしまったことは反省している。
機内持ち込みせずとも、預け入れ荷物でクチキゴキブリたちが元気に手元に返って来ることがわかってからは、なるべく預けるようになった。
クチキゴキブリは読んで字のごとく、朽木の中に棲み、朽木を食べて生きているゴキブリである。彼らは、ふだん読者の方が遭遇しているであろう「屋内に出没する黒い影」とは違い、速く走れないゴキブリだ。
私は九州大学理学部に入学し、大学4年生で卒業研究を始めたときから、この本を執筆している現在に至るまでの約7年間、クチキゴキブリを研究してきた。日本には、九州・屋久島にエサキクチキゴキブリ、奄美以南にタイワンクチキゴキブリの合わせて2種のクチキゴキブリが生息する。
沖縄本島で採集できるのはリュウキュウクチキゴキブリ(タイワンクチキゴキブリの琉球亜種)であり、調査地のある沖縄本島北部に広がる豊かな森林「やんばる」まで毎年調査・採集に行くのである。
やんばるは、クロイワトカゲモドキやテナガコガネ、ヤンバルクイナなど沖縄固有の生物にあふれた生き物屋垂涎の場所だ(生き物好きの中でもある一線を越えてしまった人種を「生き物屋」と呼ぶ)。
一生浮気はなし
クチキゴキブリは朽木を食べながらトンネルを作り、そこで家族生活を営んでいる。父親と母親は生涯つがいを形成し、一切浮気しないと考えられている、もしかすると人間よりも一途な生き物である。一生浮気せずに同じ個体と、という生き物は非常に稀であり、これだけでも研究する価値がある。
しかも、彼らは「卵胎生」という、卵が母親の体内で孵化(ふか)して子が直接お母さんのお腹から出てくる繁殖形態をとる。卵胎生はサメやダンゴムシ、マムシ、タニシなど、実は分類群を越えてぽつぽつ存在するが比較的珍しい。クチキゴキブリは交尾後約2カ月で子が生まれると、両親ともに口移しでエサを与えて子育てを行う。
両親揃って子育てを行う生態は鳥類などでは多く見られるが、昆虫ではこれまた非常に珍しい。成虫になった子は5〜6月に実家の朽木から飛び立つ。私はこの成虫になる前の子を狙って、4月にやんばるへ毎年やってくるのである。
ゴキブリ目線で語るとなんとも恐ろしい存在だ。
この記事に関連するニュース
-
小3が大切に育てるカブトムシ、異例の年越し 沖縄で長生きする「2つの理由」
沖縄タイムス+プラス / 2025年1月11日 4時39分
-
【国立科学博物館】太平洋のハゲナマコから4新種候補を含む10種を発見!~世界各国の博物館標本の遺伝子解析から多様性を明らかに~
PR TIMES / 2025年1月8日 16時15分
-
【昭和大学・国立科学博物館】太平洋のハゲナマコから4新種候補を含む10種を発見! 〜世界各国の博物館標本の遺伝子解析から多様性を明らかに~
Digital PR Platform / 2025年1月8日 14時5分
-
食べたい! モテたい! 生き抜きたい! TBS「ワケあってこの生き方!ヘンテコ生物100連発」7日放送
iza(イザ!) / 2025年1月4日 18時0分
-
韓国で客室乗務員を目指す方向け『韓国キャビンアテンダント(CA)留学』募集中!
@Press / 2024年12月20日 10時0分
ランキング
-
1天正遣欧使節・千々石ミゲルの墓、長崎県諫早市の文化財に…ミカン畑での墓石発見から20年
読売新聞 / 2025年1月15日 17時0分
-
2芥川・直木賞に選ばれた3作家 どんな人物?
毎日新聞 / 2025年1月15日 20時3分
-
3芸能人なぜ呼び捨て?「日本語呼び方ルール」の謎 日鉄会長の「バイデン呼び」は実際に失礼なのか
東洋経済オンライン / 2025年1月15日 9時20分
-
4高齢者は「体重」が重要…標準を下回ると死亡リスクが急上昇
日刊ゲンダイDIGITAL / 2025年1月15日 9時26分
-
5スニーカーのインソールを変えるだけで「靴の機能は劇的にアップ」する。“初心者が買うべき”一足とは
日刊SPA! / 2025年1月15日 15時51分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください