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"斜面の魔術師"作った「集合住宅」の衰えない人気 里山に溶け込む住宅、緑が豊かな部屋の内部

東洋経済オンライン / 2024年9月7日 8時0分

その時期はちょうど不動産バブルの時代とも重なる。一方でこの物件では、分譲価格はサラリーマンがローンを組める金額に設定した。

斜面地にあるがエレベーターはない

「ヒルサイド久末」には、エントランス、各住戸にアクセスする片廊下など、共用部が少ない。さらに、エレベーターもない。

斜面住宅のエレベーターの場合、設置にもメンテナンスにも費用が大きくかかる。家を買ったけれども、管理費が高くて住めない。そうならないようにエレベーターは外して設計されているという。竣工当時はやった投資用マンションとは大きく異なり、安く・長く住み続けることができる。

各住戸へは、階段や空中廊下を使ってアクセスする。

丘の上の住宅で暮らすことを考えれば、階段の上り下りは自然なことだが、年齢によっては負担に感じる人もいるかもしれない。

井出さんは「同じ斜面住宅で、エレベーターがないゆりが丘ヴィレッジでは、住人同士で住み替えが行われたこともあると聞きました。上の階で暮らしていた方が足を悪くされ、下の階の若い夫婦と住居を交換して住み続けていらっしゃるそうです。住宅を大切にしているからこその住まい方かもしれません」とも語る。

竣工から約40年の月日が流れ、家族構成が変わったことでリフォームをする住戸もある。設計時から、建築を支える骨組み部分をなるべく少なくするなど、大規模な修繕やリフォームを見越して作られている。これも長く住むために施された工夫の1つだ。

実は、話を聞かせてもらった井出敦史さんの父は、「斜面の魔術師」と呼ばれた井出共治さん(1940~2010年)。斜面において、周辺環境とともに魅力的な集合住宅を建てた建築家である。SUM建築研究所(現:株式会社サムデザイン)を設立し、集合住宅や個人住宅、医療施設などさまざまな建物を手がけた。

息子の敦史さんも建築家で、株式会社サムデザインの代表を務めている。共治さんの設計手法も踏襲し、住宅や別荘、福祉施設や保育園などの設計に携わってきた。ちなみに事務所は、共治さんが斜面地に設計した「HOMES20」にある。

なぜ、斜面の魔術師・井出共治さんは、斜面に集合住宅をつくるようになったのか。

斜面住宅を手がけるようになった理由

敦史さんは「父はよく『戸建てを超える集合住宅を作りたい』と言っていました。広くていい環境に安く住んでもらいたい、という考えのもと、斜面地の住宅を設計していたと聞いています」と語る。

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