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日本の「金融所得課税」議論で圧倒的に欠けた視点 総裁選の争点だが、政争の具になっていないか

東洋経済オンライン / 2024年9月9日 9時0分

こうした議論の中で、参考になるのが海外の事例だ。財務省によれば、アメリカは7.1~34.8%、イギリスは10%または20%と、所得ごとに金融所得に対する適⽤税率が決定されている。ドイツは26.4%で一律。日本と同じ運用になっている。また、シンガポールの場合、株式、金融商品の売却益が課税対象にはならない。

金融所得課税は現時点で「再分配」という視点のみで議論されているが、税を優遇することによる「経済成長」の側面と両輪で議論されることが望ましい。日本が金融立国を目指すのであれば、アメリカ型なのか、シンガポール型なのか、日本独自の型で進むのか、こうしたグランドデザインの議論になれば総裁選の争点に値する。

では、日本はアメリカを参考にするべきなのだろうか。この議論をする上で必要なのは、日本が諸外国と同じように富裕層における「富の集中」が進んでいるかだろう。日本の富裕層の人口や保有資産から見てみたい。

フランスの経済学者トマ・ピケティは世界のトップ1%の超富裕層に富が集まっており、世界的に格差が拡大していると指摘しているが、日本国内ではどうだろうか。参考になるデータがある。2022年2月に日本証券業協会がまとめた「格差の国際比較と資産形成の課題について」と題して発表されたレポートだ。

それによると、日本における所得1億円超えの人口は約2万人で、労働力人口に占める割合は約0.04%である。アメリカで、所得100万ドル以上は53万件存在し、全体の0.4%と、日本の10倍の開きがある。

富裕層への富の集中度合について調査したOECDのデータでは、富の集中度合1位のアメリカでは上位1%の層に40%の富が偏っている。日本は、上位1%の層が保有する富の割合は11%で、これは、OECDが統計を公表している27カ国のうち2番目に低い。日本では、富裕層への富の集中度合いは相対的に低い水準となっているわけだ。

日本と世界では富の集中構造が異なる

アメリカや世界で問題となっている富の集中構造は、一部の富裕層に圧倒的な資産が集中する構図だ。富を持つ数少ない人口が、より富を生み出し資産を拡大させている。

しかし、日本はどうやら構造が異なる。日本における資産が5億円以上の世帯は全体の0.2%で、その資産は97兆円(全体の6.2%)である。1億円以上の世帯は124万世帯で(全体の2.3%)、その資産は236兆円(全体の15.2%)だ。

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