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ベールを脱いだ新iPhoneが示す「AI戦略」の強み プライバシー重視で差別化、エンゲージメント狙う

東洋経済オンライン / 2024年9月10日 20時30分

AIを使い慣れた方ならば、よくご存じのことだろうが、漠然とした幅広い情報に対して質問をした場合、確かに現在のAIはまるで本当のことのように間違った情報をレポートしてくることが多い。

しかし、正しい情報を資料として与えた上でレポートさせると、極めて有益な情報を得られる。たとえ参照させている資料が膨大だったとしても、その中にある情報を突き合わせ、時系列で並べながら、情報と情報の関係を整理してくれるのだ。

Apple Intelligenceが有益なのは、iPhoneの中に集まってくるプライベートな情報を、こうしたAIサービスにアップロードする資料と同じように活用できるからだ。Apple Intelligenceはプライベートな行動や情報をもとに回答を生成するため、そこから大きく逸脱した結論は出さないと考えられる。

そのために「Private Cloud Compute」という技術をアップルは開発し、ユーザーデータの匿名化と非保存処理を実現し、個人情報の保護と高度なAI機能の共存を可能にした。こうした機能を実装するためには、データプライバシーに対する社会的関心の高まりを背景にすると、パブリックなクラウドへの依存度が高いGoogleの基本戦略では対応が難しい。

加えて無料で提供されることと合わせると、ユーザーはこの機能を“端末そのものが持つ機能”として捉えるだろう。アップデートを重ね洗練をさせていくことによって、カメラ機能がそうだったように、レンジアップデートを加速させる新しい軸になる可能性は高い。

そして、簡単にライバルが追いつくこともできない枠組みで作られている。

アップルはプライベートクラウドのコストも含め、ハードウェア、ソフトウェア、サービスを一体化して端末の価値を出し、それを1つの製品として販売している。こうした垂直統合型のモデルはiPhone以外には存在しておらず、単純にAIサービスを無料で実装するだけでもiPhone以外にとっては大きなハードルだ。

ユーザーとの長期的なエンゲージメントも高める

もちろん、この手法には懸念もある。最大の問題は、AIの性能と進化の速度だ。端末内処理とプライベートクラウドに分割されたアーキテクチャは独自のもので、大規模言語モデル開発のトレンドが加速するにつれて競争力を維持することに苦戦するかもしれない。

また、Apple Intelligenceの展開スケジュールも懸念材料だ。英語圏での先行提供に続き、日本を含む非英語圏での展開が2025年以降になる点は、グローバル市場での一部ユーザーの買い控えを招く可能性がある。

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