「60年間」株式市場と付き合って得た"現実と事実" 初心者に伝えたい「本来の」株式投資の楽しさ
東洋経済オンライン / 2024年9月11日 7時0分
京都大学名誉教授で、同大学成長戦略本部・証券投資研究教育部門客員教授の川北英隆氏の新著『京都大学人気講義の教授が教える 個別株の教科書』より一部を抜粋・再編集し、株式投資の本質論について3回にわたって掲載しています。2回目の今回は、前回に引き続き「個別株」投資の未経験者・初心者に対して筆者が伝えたいことをお届けします。
自然と株式について学んだ幼少時代
筆者は1950年、奈良県で生まれた。「株式」というものを知り、さらにそれに値段がついていると教えられたのはいつごろだったのか。多分、小学校3年生ごろだったと思う。
【画像】1950年以降の日米の株価推移。日本もアメリカも70年あまりを通じて株価は上昇してきている
父親が株式を保有していて、その関係の郵便物(配当をはじめとする企業決算関係の書類)が届くので、「これは何?」と質問することで、自然と株式を学んだようだ。
よく遊んだ友人に資産家の子息がいて、彼の家で夕方近くまでいると、夕刊が配達される。と、友人は株価欄を広げ、彼の父親が保有する株式の株価を眺めていた。
当時の奈良県人にとって、近畿日本鉄道(今の近鉄グループホールディングス)の株主となり、鉄道の無料パスをもらうのがステータスだった。無料パスをもらうには、かなりの株数が必要だった。友人の家はその無料パスをもらっていた。
調べると(今まで知人の財産を計算するなんてしなかったので)、1961年年初の近鉄は1株200円くらいだった。8600株以上保有していると無料パスがもらえたとのことだから、計算すると172万円以上の資産価値になる。配当は1株6円だったので、年間5万1600円以上を受け取っていたことになる。
当時の庶民にとって憧れに近かったテレビ(白黒、14インチ)が6万円程度だったそうだから、1年間の配当でほぼそれが買える(大卒男子の初任給が1万5000円程度)。やはり友人の家は、当時感じていたとおりの資産家だったわけだ。
説明しておくと、当時の鉄道は成長産業だった。今は人口減少の時代、通勤・通学客相手の鉄道事業は斜陽に近い。そのため鉄道会社は経営の多角化を図っている。
京都大学経済学部の1年生のときだったか、貯めていた小遣いで株式を買い、すぐに1万円ほど儲けて登山靴を買った。しかし、株式を売り買いして儲けるのは神経をすり減らすだけ、趣味に合わないと悟った。
日本生命に入社し学んだこと
大学を卒業して、一応社会人になる資格ができた。経済学を研究する気は毛頭なかったので、企業に就職することにした。
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