老後の「ギスギス夫婦」と「おだやか夫婦」の決定差 歳をとるとなぜ夫婦仲は悪くなってしまうのか
東洋経済オンライン / 2024年9月13日 20時0分
脳神経内科が専門の医学博士で、老人医療・認知症問題にも取り組む米山公啓氏による連載「健康寿命を延ばす『無理しない思考法』」。エンターテインメントコンテンツのポータルサイト「アルファポリス」とのコラボによりお届けする。
歳をとればとるほど、夫婦の仲は悪くなる?
私の診療所には、高齢のご夫婦がたくさん通ってきます。そんな患者さんからよく耳にするのは、「旦那とは合わないね」「俺の話をなんでも否定するんだから」といった愚痴です。一見仲のいい夫婦に見えても、いまだに「合わない」という言葉を聞くと、夫婦円満の難しさを感じます。
年齢も重ねれば人間もできてきて、相手を受け入れられるようになると思いがちですが、実際は逆のようです。
高齢になればなるほど相手の意見を受け入れられなくなってしまうのには、理由があります。
新婚の頃であれば許せた相手の言葉や態度が、歳をとってくると許せなくなってしまう、というのはよく聞く話ですが、関係が落ち着いているはずの熟年夫婦でもそれは起こります。ついこの間まで「いいね」と同意されていたことが、何を言っても否定されるようになった、といったことが起きるのです。
これは、歳をとるほどその人の本来の性格が強く出るようになってしまうためです。
遺伝子の影響は子供のときに強く出るように思ってしまいますが、子供のときは「親」という環境要因が大きく影響して本来の性格は出てきにくいのです。その一方で、大人になってさまざまな制約がなくなってくると、その人本来の遺伝的な要素が強く出てきます。高齢になって理性的な部分の抑制が利かなくなるというのもあり、その人の本来の性格が強く出てきてしまうのです。
歳とともに、以前はやさしかった人が怒りっぽくなり、否定などしない人が何を言っても否定してくるようになるというのは、じつはよくあることなのです。
それに加えて、この「否定してくる」というのは、じつは人間が本来持っているリスクを管理する本能のようなものでもあります。
新しいことには危険が伴い、自分を守るためにまずは否定から入ってしまうのです。
家族が何を言っても否定してくるようになったなら、その人本来の性格が出てきているのかもしれませんし、高齢になってリスクを下げるために、まずは否定しているのかもしれません。「新車を買おうと思う」と旦那さんが言えば、「いまさら新車などもったいない、どうせぶつけてしまうでしょ」というような言い方をされるわけです。
否定から同意へ
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