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「サバイバル漫画」が描く"災害で崩壊した世界" 大きな災害に見舞われた時、人はどうなるのか

東洋経済オンライン / 2024年9月13日 13時0分

まるでカルト宗教に魅入られたかのように、全身に呪術的なペイントを施したノブオが二人を支配しようとする場面は強烈なインパクトがあった。しかし、それはまだほんの序章。闇に消えたノブオを残し、どうにか地上に出たテルとアコが見たものは、昼なお暗い廃墟と化した世界だった。

そこから二人は東京に帰るべく歩き始める。途中、隊を離脱した不良自衛官と行動を共にしたり、津波によって孤立した島となった伊豆でゴッドマザー的な女性に救われたかと思ったらテルが病に倒れ、アコと自衛官が薬を探しに行った街で暴徒に追われたりと苦難の連続。行く先々で泥流や巨大竜巻にも襲われる。文字どおり命がけでたどり着いた東京もやはり廃墟と化しており、謎の地下組織がうごめいていた……。

リアリティある設定と作画、丁寧すぎるほど丁寧な語り口で積み上げられた物語は圧巻。パニック状況下の人間の異常心理、宗教や暴力の発生メカニズムの描写にも震撼する。連載開始後に阪神・淡路大震災と地下鉄サリン事件が起こったことで物語世界に現実味が増した反面、ドラマチックな展開を持ち込みづらくなった部分もあっただろう。

それゆえ、同じカタストロフ後の世界でもいくばくかの希望があった『サバイバル』に比べ、『ドラゴンヘッド』は救いがないようにも見える。しかし、作者はこの作品の着地点について「『恐怖は人の頭が作る想像力だ。だから未来を作るのも人の想像力だ』ということは決めていました」と述べている(文藝別冊『総特集 望月ミネタロウ』収録のインタビュー)。それを体現したラストシーンから、人間存在の肯定と未来への希望を読み取ることは難しくない。

文明社会が崩壊したあとの世界を描く『望郷太郎』

昭和、平成に描かれたカタストロフの要因は、主に大地震や核戦争であった。しかし、令和以降においては気候変動がその要因となりうる。ゲリラ豪雨や巨大台風は現実のものとなっているし、将来的には水没する都市や国が出てくることも危惧されている。

山田芳裕『望郷太郎』(2019年~)は、そんな気候変動により文明社会が崩壊したあとの世界を描く。主人公は、巨大企業創業家の7代目・舞鶴太郎。グループ企業のイラク支社長として赴任中に未曾有の大寒波に襲われ、妻子とともに地下シェルターの冬眠装置に入る。しかし、目覚めたときにはなんと500年もの時が流れており、別のカプセルに入っていた妻と息子は電源停止により死亡していた。

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