「太ると病気になる」という不安が招く深刻な弊害 幸福感を犠牲にした食生活では健康になれない
東洋経済オンライン / 2024年9月14日 16時0分
極端な糖質制限ダイエットがもてはやされたりすることからも、日本人は、太ることに異常なまでの恐怖心を持っている気がします。
これがスタイルや見た目を気にする若い女性であれば、まだその心理は理解できるのですが、高齢者にも「太ってはいけない」という観念がとても強く、自ら食べる量を減らしてしまう傾向がみられます。
高齢者の多くが肥満に対する恐怖心を植え付けられた理由には、国の健康政策の影響があります。2000年に厚生労働省は『健康日本21』を策定しました。
以降、「生活習慣病(メタボリックシンドローム)に気をつけましょう」と、生活習慣病への注意喚起をいたるところから耳にするようになりました。
たとえば、スーパーに行けば中性脂肪を減らす商品がズラリと並び、テレビの健康番組や雑誌などでは「肥満」による生活習慣病のリスクや恐怖がつねに語られるようになりました。
私たちはそうやって約20年もの間、「太ったら病気になる、長生きできないぞ」という言葉のシャワーを浴び続けてきたわけです。
何度も繰り返すようですが、日本人の多くがエネルギー不足に陥っているのです。日々、必要とされるエネルギーを毎日の食事からしっかり摂取できていないのです。
とりわけ、高齢になると自然に食が細くなりますから、むしろ「やせ」が問題になります。さらに栄養が摂れなくなってしまうので、とても危険です。それが「フレイル」です。
フレイルとは、肉体的・精神的に「虚弱」になる状態を指します。肉体的には筋肉が減り(サルコペニア)、それによって筋力や運動能力が低下してしまうのです。食べ物はからだを作り上げる材料です。加齢により減り続ける筋肉も、食べて、からだを動かすことで作られます。
それを 「太るといけない」などと考えて、食事量を減らそうとするのは本末転倒。特に高齢の方にはもうちょっとしっかり食べていただきたいのです。
「幸福感」を犠牲にする食生活は健康を損なう
「主観的健康寿命」 という言葉をご存じでしょうか?
これは「疾患の有無にかかわらず、自分が健康であると自覚している期間」を指します。
たとえば、高血圧や糖尿の傾向はあっても、特に制限なく、快適に日常生活を送っていると自分自身が思えるなら「健康」である、という指標です。
こうした主観的健康感が悪くなると、要介護の発生率も増えるという調査結果があります。心の持ちようが明るくなればからだも元気になり、疾病の疑いや「太りすぎると病気になる」といった不安に駆られると、健康も次第に損なわれていくといえます。
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