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医師不足を助ける新しい資格「医師助手」の期待度 アメリカで始まり、日本でも導入の議論が進む

東洋経済オンライン / 2024年9月14日 11時0分

これまでは医師が行っていた術後の患者や家族への説明、サマリーと呼ばれる手術内容や経過の記載は、医師の指示のもとにPAが担う。それにより、加藤医師は次の手術に備えたり、別室の手術に参加することが可能になった。

安心感につながっている

午後、山田さんは加藤医師と整形外科の病棟に向かい、膝の手術を終えて退院が近いBさんの病室を訪ねた。術後の画像をBさんと一緒に確認したあと、通院のスケジュールや退院後の注意点などを伝える。

トライアスロンを趣味にするBさんが、「退院後はいつから走っていいですか?」と聞くと、理由を話したうえで、「1カ月は安静にして、その後少しずつ動かしていきましょう」と説明。Bさんは競技復帰までのイメージをつかめたようだった。

「話を聞いてくれる人がいることが安心感につながっている。(山田さんには)わからないことを何でも聞けるし、それに答えてくれる頼りになる存在」とBさんは話す。

PAは1960年代、医師不足が社会問題となったアメリカで始まった。その後、医師の監督下で診察・検査・処方などを行う専門職として地域医療を担い、その存在価値が広く認知されるようになった。

日本でも医師の働き方改革などを受け、2010年頃からPA導入に向けた議論が厚生労働省などで行われている。しかしながら、具体的な業務の検討が必要とされているものの、医師以外の者が医行為を行うことへの懸念や安全管理、診療報酬上の配慮が必要なことから、現在までに制度の創設には至っていない。

亀田総合病院にPAが院内資格として導入されたきっかけは、2009年にスポーツ医学科が整形外科から独立したことにある。

開設当初は少人数で対応可能な手術が中心だったものの、患者数の増加に伴い、手術件数はもちろん、紹介状の返信やサマリーの作成など診療以外の業務が膨れ上がり、医師たちを圧迫。さらなる診療拡充を目指していた大内洋医師(同科主任部長)は、研修医以上の知識を持った看護師によるサポートが必要だと考え、院内にPAを配置しようと動き始めた。

PA誕生までの道のり

PA創設にあたり、大内医師は前の職場で出会った理学療法士の市川顕さんに声をかけた。市川さんはPAの業務をするうえで必要な准看護師の資格を取得したうえで、2010年4月、スポーツ医学科のPAとして働き始めた。

だが、日本に存在しない資格であるPAにどこまでの業務を任せられるか。「そこを定義するのが難しかった」と市川さん。

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