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医師不足を助ける新しい資格「医師助手」の期待度 アメリカで始まり、日本でも導入の議論が進む

東洋経済オンライン / 2024年9月14日 11時0分

PAに必要な看護師や准看護師の資格は、法律では「診療の補助」と「療養上の世話」と定義されており、その範囲を超えることはできない。院内での協議を重ね、詳細な業務範囲を少しずつ広げていった。

一方、市川さん自身にも医学的な知識や、診察に必要なスキルが不足していた。そこで、たくさんの書籍や論文を読んだり、学会などに参加したりするなど猛烈な勉強の末、医師と共通言語で会話できるレベルになった。

今では研修医や看護師などへの指導も行うようになり、PAのレベルの向上とともに、周囲からの信頼はさらに高くなっている。

PAの活躍で手術件数の増加

そして今やPAは、医師の働き方改革のキーパーソンでもある。

2016年に加藤医師が着任した当初、患者数を増やそうと夜遅くまで外来を開けていたため、医師やPAは夜9時頃まで働くことが常態化していた。だが今は、その頃よりも患者数は圧倒的に多いものの、終業時間の17時には仕事を終わらせている。

「そのぶん仕事が凝縮されて、走り回ることも多いですが。1つひとつの診察や治療、手術の質を担保することは絶対なので、PAが外来、手術部、看護部などのさまざまな部署に働きかけ、診療環境の拡充、次の手術の迅速な準備、病棟との情報共有を行っています。スムーズに進めようとするサポートが重要です」(加藤医師)

さらに、PAの教育が進み、年間200件だった手術件数が500件に増えたタイミングで業務内容を広げた。スポーツ整形外科の専門知識を有したPAが積極的に患者さんと関わることで、不安の解消や治療上の些細な変化をキャッチすることが可能になった。

また、各部署と密なコミュニケーションを図り、「ハブ」の役割を担ったことで、同科全体は忙しくなったにもかかわらず、患者満足度と院内におけるPAの認知度が上昇するという好循環が生まれた。

それによって、スポーツ医学科は院内でも大きく収益を出す科に進化し、他科・他部門のスタッフからも注目されるようになった。さらに、看護師の新たなキャリアとしても注目されるという副産物も生み出した。

医師と患者、他の職種をつなぐ

医師と患者だけでなく、医師と他の職種をつなぐPA。

一方で、看護師とPAをどうすみ分けるのか、難しい面もある。実際、本来は看護師もやっていいことであっても、「PAがやるだろう」という理由で看護師がやらない業務も出てきていると、山田さんは懸念している。

お互いが持つ情報を共有し、さらなる多職種連携強化を目的としてPAが主体となり、看護師・医師・理学療法士などによる多職種カンファレンスが行われるようになった。

「PAは新たな看護師のキャリア。入院中だけでなく、退院後やその数年後を見据えて、患者さんに必要なケアは何かと考えながら関わることが、やりがい」と山田さん。

PAが同院で必要不可欠な存在になったことをモデルとし、患者の回復・健康増進に関わる職種として社会に広く認知され活躍することで、医師の働き方改革以降も質の高い医療が継続されるだろう。

高山 真由子:N direction代表、東京先進整形外科看護部、看護ジャーナリスト

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