ミドルエイジが歳を重ねることに不安を感じたら モヤモヤした日常の"からまり"をどうほぐすか
東洋経済オンライン / 2024年9月15日 18時0分
とある講義の一環で、「自分から遠い専門性を持っている先生にアポイントを取って1時間話す」という課題が出たため、その先生とお話しすることになった。どう? おもしろい講義だと思いません?
私が、その先生に目をつけた理由は、大学院に所属しているのに、公的なデザイン関係の仕事をしていたり、起業していたりと、何足ものわらじを履いているからだ。
経歴も、大学院卒業後に一度就職し、その後留学してまた大学に戻っている。ずっと学校内のみでキャリアを積んできた先生が多い中で、キャリアの変遷が大学の先生的スタンダードではないところに魅力を感じた。
それは、「私もそういうふうにキャリアを歩みたい」と、どこかで思っているからだ。仕事や学校、色々な場所を行ったり来たりして、複数のことをやっている人になりたい。
先生とは、1時間ほどお話しした。私は学生として質問をする側だ。先生が現在の肩書になるまでにたどってきた足跡をうかがった。なぜ大学でその専攻を選んだのか、なぜドイツに留学したのか、なぜ出版社に就職したのか、そこからなぜ大学院で教員をしているのか……などなど。
お話を聞いていると、先生のキャリアは偶然に突き動かされているように見えた。でも、つながっている。ビリヤードの玉突きのようにボールが次のボールへと、コツン、コツンとぶつかって、次から次へ突き動かされているようなキャリア。
ぱっと見、前のボールの動きは関係ないように見えても、動いていくうちに次のボールを突き動かしている。最後にコーナーポケットに吸い込まれるまで、先生のキャリアはつながっている。
玉ねぎの皮をむいていく
「先生は、色々な肩書をお持ちですが、どの肩書が一番自分のキャリアを表していると思いますか?」。私は、自分でも答えが出ない問題、どんな肩書で生きていきたいかについて尋ねてみた。
先生は言葉を選びながら答えた。「たぶん、編集者でしょうね」。自分自身のこれまでのキャリアを振り返ると、大学の仕事も起業も公共の仕事も、全部編集だった。そして自身のキャリアの骨子は編集者なのだと思うと。
「玉ねぎの皮って、むいていくとどんどん芯に近づくでしょう。キャリアってそんな感じで、歳を重ねるほど皮が増えていくのよ。それをむいていって、最後の芯に残っているものが自身が大事にしているキャリアの根幹なのだと思う。
私の場合、それは編集者。周りからは肩書としての〝大学教授〟や〝起業家〟なんてものが見えるけれど、それは玉ねぎの皮であって、キャリアのコアではないのよね」
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