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チョーヤ「創業家が自ら営業」した海外事業の今 黒字化まで30年…創業家の情熱と、時代適応

東洋経済オンライン / 2024年9月16日 13時10分

発酵・熟成させることなく、さらに食品添加物を使用せずにこのような味わいをつくれるのは、チョーヤが培ってきた技術力があってこそだ。ただその分、発酵・熟成するよりも工程が多くなってしまうそうで、値段が高くなってしまうことが課題ではある。

味のぶれは「避けてはいけない」課題

ここまで、チョーヤのさまざまな工夫や営業努力を見てきた。だが最大の強みを挙げるとするならば、飲み物である以上、やはり味わいになるのではないだろうか。中編で紹介したが、チョーヤ梅酒では酸味料・香料・着色料を使用せず、昔ながらの製法を守っている。「焼酎35度1.8Lに対し、梅1kg、砂糖1kg」が基本のシンプルな製法だ。

だが、シンプルだからこそ味を均一化するのは至難の業。たとえ同じブランドあっても、飲み比べると、製造ごとに味はかなり異なるという。しかし、これはなにもネガティブなことではない。天然の梅だからこそ、品種、熟度、産地が違えば、味は違って当たり前。完璧に同じにはならないのだ。食品添加物を使って同じにすることのほうが不自然である。これが、同社が、「味については90点以下のものをつくらない」ことを目指すゆえんだ。

ただもちろん、なるべく均一に近づける努力はしている。まず、梅をタンクに漬け込む際には、あらかじめ酸の量や果肉の具合を確認し、予測の味を決めておく。それと合っているかを、酸度などの「数値計測」と、人による「官能検査」の両方で確認。その結果をもって、ブランドごとに、3~4種類の原酒を使ってブレンド割合を決めていくそうだ。

そして、このブレンド技術こそがチョーヤ最大のストロングポイントだと金銅氏は言う。

「ワインであればビンテージという考え方がありますよね。『どこの地域の何年もの』など、プレミアを付けて売られています。残念ながら梅酒はそうはできませんが、天然ものだからこそ味のぶれは避けてはいけない、酸味料や香料、着色料に逃げてはいけない課題だと思っています」(金銅氏)

ちなみに創業から今まで、まれに「味が違う」などの指摘を受けることもあったが、チョーヤ梅酒の特徴を説明し、納得してもらっているそうだ。

利益をよりもミッションと夢を追求

梅酒は1700年頃、江戸時代に生まれた飲み物で、当時の食について記された本草書『本朝食鑑』にもレシピが残っている。当時は日本酒の古酒を使用していたが、時代と共に蒸留酒に変わり、数百年の時を越え愛されてきた。

「弊社のミッションは梅酒の文化を世界に発信し、後世に伝えることです」。金銅氏が取材中、何度も言った言葉だ。そして最後も、「利益をよりもミッションと夢を追求する。その気持ちを残しながら、梅酒をつくり続けていきたい」と締めくくった。

チョーヤ梅酒の在り方はすぐに真似できるものではない。そして、決してスマートではなく、泥臭い。だが、これも日本ならではの企業文化として、後世に受け継いでいくべきものではないだろうか。

笹間 聖子:フリーライター・編集者

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