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氷衛星の地下、液体を湛える海に生命はいるのか 「地球外生命」探査の最前線に迫る

東洋経済オンライン / 2024年9月17日 17時0分

しかし科学探査は金銭的利益を求めるものではないため、民間資金で行うことも困難だ。ゴダードやフォン・ブラウンの時と同じように、宇宙の知的探究に立ちはだかる壁の一つはやはり、お金なのだ。

一方で、エンケラドス・オービランダーという新しい構想が持ち上がっている。「オービランダー」とはオービターとランダーを合わせた造語で、まずエンケラドスを周回し軌道上から観測した後、地表に着陸しバイオシグネチャーを探す。構想通り2030年代後半に打ち上げられれば2050年代前半に着陸するが、計画は遅れる見込みで、予算の壁が立ちはだかるかもしれない。

Journey to the Center of Icy Moons 〜氷底探検

軌道上からの観測でエウロパやエンケラドスのさまざまなことがわかるし、その氷の上に着陸してバイオシグネチャーを探すこともできる。

だが、皆さんは思わないだろうか。氷の下にある広大な海を見てみたい、と。そこに何があるか、何がいるかを知りたい、と。それはきっと、かつて海を見ることを切望した少年ジュール・ベルヌと同じ思いだろう。

立ちはだかるのは、厚さ数十キロにもなる分厚い氷の殻だ。一つの方法は、この氷を溶かしたり削ったりして氷の下へ潜っていくことだ。だが、この方法で数十キロの氷を掘り抜くには膨大なエネルギーと時間が必要になる。

もう一つの方法がある。わざわざ人為的に穴を掘らなくても、土星の氷衛星エンケラドスの南極付近には氷の割れ目があり、そこから海水が蒸気となって噴出しているのだ(エウロパにも同様の蒸気噴出口がある可能性が示唆されている)。この穴の存在は、まるでエンケラドスが我々を地底の海へと招いているようにも思えないだろうか?

2016年に、僕のチームはエンケラドスの噴出口の中へロボットを送り込むアイデアを検討した。そこから出てくるジェットの強さやロボットが受ける風圧などを解析した結果、噴出口の直径が10センチよりも大きければ、ロボットが下降することは物理的に可能であるという結論が出た。

噴出口の直径は未知だが、カッシーニの観測によりエンケラドスからは毎秒300キロもの水が噴出しており、かつ100を超える噴出口があるらしいことがわかっている。その全てが直径10センチより小さいとは考えにくい。ロボットが潜っていくのに適した噴出口がおそらくあるだろう。

では、どのようなロボットが、どのようにすればこの氷の穴を潜っていけるのだろうか? 僕たちは下の写真にあるようなEELSという名のヘビ型ロボットを想像した。複数のモジュールを連ねた構造で、各モジュールの側面には螺旋状の刃がついており、これを回転させることで前後左右に進むことができる。

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