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高級ホテルの顧客が通う「銀座の高級寿司」の実際 「銀座寿司幸」が140年繁盛している納得の理由

東洋経済オンライン / 2024年9月17日 12時0分

そこで、杉山氏は店のスタッフたちに英会話を習わせたのである。週4コマのレッスンがもう10年も続いている。だから、若い板前たちは、海外からのゲストの対応をしっかりと任せられるまでになっている。10年以上も前にそうしたアイデアを思いつくというのはさすがとしかいいようがない。

さらに当時、ペニンシュラやマンダリン・オリエンタルなど高級ホテルのコンシェルジュに15枚分の招待状を出した。必ず20時すぎに3~4人で来ることを条件にして。そして、実際に、インバウンド客とのやりとりを見てもらう。すると、ホテルゲストから寿司が食べたいというリクエストがあったときに、コンシェルジュたちは自信を持って銀座寿司幸本店を推薦してくれるようになった。

「どんな飲食店も菓子折りくらいは持っていくだろうが、こうしたことをやった店はないのではないかと思いますよ。たった数十万円、広告宣伝費と考えれば安いものです」と杉山氏。

「このやり方のいい点として、高級ホテルからの紹介の客であれば、トラブルを起こすことがほとんどないということもあるんです。逆にトップ20以外のホテルからは予約をとらないようにしました」

コロナ明けにいち早くインバウンド客が戻ったのもこうしたアイデアと努力の賜物である。現状は3割がインバウンド客だそうだ。また、彼らは20時半~という遅い時間帯を好んで来てくれるというメリットもある。

予約の電話で、早い時間帯は空いていないけれど、20時半~なら入れますよと答えると、日本人客の場合8割は断るというが、インバウンド客はむしろ喜ぶ。欧米の食事文化の時間帯を考えれば当然ともいえることだが、二毛作ともいうべき、客の入りが望めるわけだ。

普通の人が行ける寿司の上限は「3万円」

”寿司バブル”と言われる今の時代、1人5万~6万円を超える店も珍しくない。しかし杉山氏は自分の店はあくまで適正な価格であり続けたいという。もちろん超一流の高嶺の花の銀座の寿司店だ。特別なワインなどを飲まなくても3万円台にはなる。しかし、それが、ある程度余裕のある普通の人が行ける上限の価格だと考えている。

温暖化による資源の枯渇、円安による諸物価の値上がり、人件費の高騰など、諸般の厳しい事情から考えると、並大抵の努力ではその価格帯におさまらない。

ちなみに2000年より前には1kg1.5万円だった鮑が今は3.5万~4万円にはね上がっているそうだ。原価を抑えるためには、まず、数字に厳しくなることが最も大切であるという。毎朝の仕入れの請求書には誰よりも厳しく目を通す。

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