クルクス反攻で苦境に陥ったプーチン大統領 戦勝計画をアメリカに迫るゼレンスキー
東洋経済オンライン / 2024年9月17日 21時0分
これより先、越境攻撃という一種の奇襲攻撃を成功させたウクライナ軍は、クルスクの一部地域占領を続けている。この越境攻撃にはいくつかの狙いがある。
そのうちの最も主要な狙いは、長期的にロシア領内を一部占領し続けることで、プーチン政権に屈辱を与え、「力の立場」で侵略中止と完全撤退を迫るための交渉材料にすることだ。
クルクス奪還を始めたロシアだが…
クルスク占領とモスクワなど大都市攻撃という双方の継続は今後、プーチン大統領に侵攻停止とウクライナからの撤退を迫るうえでの圧力装置の両輪となる。
クルスク州の一部占領を続けているウクライナ軍に対し、ロシア軍は2024年9月11日、ようやく本格的反攻作戦を開始した。越境から1カ月以上経ってからの反撃開始だった。
ロシア軍はウクライナ東部・南部戦線に張り付けていた部隊から計3万人から4万5000人の兵員をかき集めて転戦させて作戦を開始、これまでに「10の集落を奪還した」と主張した。
反撃開始までの間、プーチン氏はとくに重要ではない外遊をキャンセルせずに次々行うなど、クルスクへの越境攻撃についてさほど重大事と捉えていないかのような余裕の姿勢を国内外で見せていた。しかし、これはロシア軍のクルスクでの反攻態勢が整うまでの時間稼ぎだったようだ。
1カ月以上という準備期間については、ロシア軍の投入兵力の規模などを考えれば、ロジスティックス上、これほど時間がかかったのは当然とみている。
これに対しウクライナ軍は、ロシア軍の反攻作戦を受けてクルスク州内の新たな地区への前進を開始、「反攻への反攻」作戦を展開している。本稿執筆時点でクルスクでの軍事的主導権はウクライナ軍が引き続き握っているとキーウの軍事筋は断言している。
今後、クルスク情勢はどうなるのか。現兵力でロシア軍がウクライナ軍をクルスクから撃退するのは不可能と筆者はみている。当面の焦点は、プーチン氏が今後、どれだけクルスクに兵力を追加投入できるか否か、だ。
ロシア軍が露呈した大問題
今回の反攻作戦開始でロシア軍は大きな問題点をさらけ出すことになった。それは何か。現在、ロシア国内にはクルスクでの作戦に新規に投入できる予備的実戦部隊が存在しないという事実だ。
今回ロシア国防省は、これまで最重要な攻撃箇所だった東部ドネツク州での激戦地ポクロフスクやチャシフヤルから一部部隊を剥がして、クルスクに投入せざるをえなかった。
これまでも、戦死者の増大をまったくいとわない異常な肉弾突撃攻撃を繰り返しているロシア軍にもはや国内に予備兵力がないことを再三指摘してきたが、このことがこれまで以上に明らかとなった。
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