クルクス反攻で苦境に陥ったプーチン大統領 戦勝計画をアメリカに迫るゼレンスキー
東洋経済オンライン / 2024年9月17日 21時0分
ロシア軍の攻勢でウクライナ軍が苦しい状況に追い込まれていた東部のポクロフスクをめぐっては、プーチン氏がロシア軍に対し2024年10月1日までに制圧するよう厳命していた。
しかし、ロシア軍がポクロフスクから空挺部隊など一部部隊をクルスクに転戦させたことで、もはやこの命令実行は事実上不可能だ。攻撃は続いているものの、命令は事実上撤回されたと言っていいだろう。
一部のロシア軍従軍記者は先日、ポクロフスク攻防戦について「放棄された戦線」と評したほどだ。東部戦線でロシア軍の攻勢が続いているが、肝心のポクロフスクなどで攻撃は大幅にトーンダウンするだろう。
最近、一部の内外軍事専門家やメディアで、ロシア軍が東部戦線からクルスクに反攻部隊を投入する以前に出回った説がある。つまり、ロシア軍が東部から部隊をクルスクに移動させなかったので、東部からのロシア軍兵力の一部引き剥がしを主目的としていたウクライナのクルスク越境作戦は「失敗だった」というものだ。
もともとウクライナ軍のクルスクへの越境作戦の主な目的は、上述したように、長期的占領により交渉材料にすることだ。ウクライナ軍はポクロフスクなどで確かに苦境にあったが、東部からのロシア軍部隊をポクロフスクからクルスクに転戦させることを主目的として越境したわけではない。
それどころか、ロシアがクルスクで反攻作戦を開始した直後、キーウでは、ウクライナ軍かロシア軍のいずれか「ミスをしたほうが負ける」(軍事筋)との緊張感が一時高まっていたほどだ。ポクロフスクからの転戦実現を喜ぶ雰囲気ではとてもなかった。
ただ、現在クルスクに投入されたロシア部隊はまったくの寄せ集め部隊。戦争開始直後にロシア軍の精強部隊とウクライナ側に恐れられた空挺部隊は、戦死者が多いため再編成を余儀なくされ、今や部隊は「3代目」。徴集されたばかりの兵士を含むなど経験不足が目立ち、実態は精鋭部隊には程遠い。
ロ参謀総長「年内のクルスク奪還は困難」
最近プーチン氏が国防省トップら最高幹部を招集したクレムリンでの会議で、ゲラシモフ参謀総長はクルスクを完全に奪還できるのは「2025年初めまでに」と報告したと言われている。
実際にクルスク奪還がそこまで遅れれば、国内でくすぶっているプーチン氏への批判や、侵攻反対論がより表面化してくる可能性もある。その意味でプーチン氏は苦境に立たされていると言えよう。
冒頭紹介したように、9月24日に予定されているゼレンスキー氏とバイデン氏との首脳会談の結果が今後の戦局に大きな影響を与えるのは確実だ。
この記事に関連するニュース
-
ゼレンスキー氏「露軍が反撃開始」 越境攻撃下のクルスク州 戦局の帰趨を左右
産経ニュース / 2024年9月13日 9時35分
-
プーチンと国民の離反を狙うウクライナ軍の戦略 モスクワなど大都市への攻撃可能性も
東洋経済オンライン / 2024年9月2日 21時0分
-
ゼレンスキーのクルスク侵攻は「プーチンの思うつぼ」だったのか?...「時間が経つにつれて、損失は大きくなる」
ニューズウィーク日本版 / 2024年9月2日 17時0分
-
ロシア領侵攻でゼレンスキーは「勝ち馬」になれるか プーチン政権と軍部の溝も拡大中
東洋経済オンライン / 2024年8月21日 20時0分
-
ウクライナ軍のクルスク侵攻はロシアの罠か
ニューズウィーク日本版 / 2024年8月19日 17時48分
ランキング
-
1元妻は「検索履歴が残らない設定に」 “紀州のドン・ファン”殺害事件 スマホ分析の警察官が法廷で証言
ABCニュース / 2024年9月17日 17時33分
-
2アイフォーン買い占め巡りチャイニーズドラゴン同士が怒号、店の業務妨害 容疑で7人逮捕
産経ニュース / 2024年9月17日 18時53分
-
3《“密告”で正社員から降格させられることも…》東京中央美容外科(TCB)現役看護師たちが記者に告発した“ギスギスした雰囲気”「気に入らない同僚はチクり放題で…」
文春オンライン / 2024年9月17日 16時0分
-
4日本だけがハンドドライヤーを禁止に メーカー社長、国に怒り
毎日新聞 / 2024年9月17日 11時0分
-
5仙台市のアパートで「刺された」と110番、駆けつけると腹部から血を流す女性…何者かが刺して逃走か
読売新聞 / 2024年9月17日 15時46分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください