しまむら、カスハラ「出禁」対応で日本が変わるワケ 「お客様は神様」というスタンスから脱却へ
東洋経済オンライン / 2024年9月18日 11時0分
しまむらグループが強固なカスハラ対応姿勢を打ち出せたのにはこのような背景があります。今回の発表をうけ、顧客満足を追求してきた小売業にもカスハラ対策が普及するようになると予想されます。
小売業界におけるカスハラ対策が遅れてしまう理由
2022年に厚生労働省から「カスタマーハラスメント対策マニュアル」が発表されると、交通・インフラ業界は次々と自社のカスハラ対策方針を公表してきました。
これらの業界は、サービスに不満を感じていたとしても利用客がそのサービスを利用しなくなることはほぼありません。たとえば鉄道会社の職員の対応に不満をもっていたとしても通勤などで電車を利用せざるをえないように、交通・インフラ業界はカスハラ客に対して「毅然とした態度で対応します」というスタンスを示すことが比較的容易なのです。
一方、小売業ではそうもいきません。小売業界は競争が激しく、商品やサービスに不備があると利用者はすぐに他店へ流れてしまいます。商品での差別化が難しくなるにつれて、丁寧なサービスで差別化を図ってきたため、カスハラ対策を下手に発表して、利用者から「あの会社は客のことを大切にしない会社なのか」と思われることは、最も避けるべきことだという考えが根強く残っているのです。
私がクレーム対応研修を行っている大手ショッピングモールでもカスハラ対策は後手に回っています。その要因として小売会社ごとに接客サービスの方針が大きくことなることが挙げられます。複数の小売会社がテナントとして入っているショッピングモールは統一したカスハラ対策が立てづらい環境だということです。
上記のような状況の中で、高島屋グループが2024年7月に「カスタマーハラスメントに対する基本方針」を制定しました。これは大手百貨店では初の施策です。百貨店とショッピングモールでは客層に違いはありますが、これにより同じ小売業であるしまむらグループも対策に踏み切りやすくなったという側面はあるでしょう。
さてここからは、しまむらグループが公表したカスハラ対策方針から、接客業・小売業界がとるべき対策はどのようなものなのかを見ていきましょう。
カスハラ対策マニュアルの文言は具体的に
しまむらグループの「カスタマーハラスメント対応ポリシー」によると、お客様からのハラスメント行為によって「従業員の就業環境が害される」場合には、「取引の停止や店舗等への出入りをお断り」のほか、「警察・弁護士など、しかるべき機関と連携し、厳正に対処」することを公表しています。
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