しまむら、カスハラ「出禁」対応で日本が変わるワケ 「お客様は神様」というスタンスから脱却へ
東洋経済オンライン / 2024年9月18日 11時0分
このように企業としての対応姿勢を対外的に打ち出すことで、悪質なクレーム客を牽制することができます。それだけでなく、発表をみた従業員も「会社が守ってくれる」と安心して働くことができ、良いことずくめです。
しかし「対応ポリシー」の内容をよく見てみると、カスハラの定義や具体的な対応策については厚生労働省のカスハラ対策マニュアルをほぼ踏襲しているだけで、これを読んだ従業員が現場でトラブルを解決することは難しいと考えます。
実践で使えるカスハラ対策マニュアルを作成するとき意識していただきたいのは、従業員が対応に迷うような曖昧な表現はなるべく具体的な言葉に置き換えるということです。
たとえばカスハラの定義を定める際には、「威圧的な言動」などではなく「バカ」「殺すぞ」といった具体的なワードを口にすればカスハラと認定する。「長時間にわたる執拗な要求」ではなく「30分間以上、同じ要求を繰り返される」場合にはカスハラと認める、とすれば、現場で従業員が自ら状況を判断することができます。
「クレーム対応はそのときの状況によって変わるものだから、一概に決められないのでは?」という疑問も出てくるでしょう。
しかし、 現場のスタッフが判断する際に迷いが出るようでは、もはやマニュアルではなく、ただの参考資料です。使えない参考資料を読み続けるのは、時間の無駄でしかありません。
カスハラ対応は組織の的確なバックアップが不可欠
現場ごとにトラブルの状況が異なるのは当然ですが、ある現場で起きたクレームやカスハラの事例を記録して保管しておくと、その記録をもとに「あの状況ではこの対応法が効果的だった」というように分析していくことで、各現場に適した対策を具体的にマニュアルとして定めることができます。
マニュアルは、誰が読んでも迷うことがないよう、ルール、手順は細かく、表現は具体的にすることが鉄則です。対応手順はクレームの見極め方から個別の対処法まで具体的に記載します。
例えばお客様から身の危険を感じるような言動をとられた際の対処法として、「今、お客様がされた行為は○○罪にあたりますよ!」と、警告する旨をフレーズと共にマニュアルに記載しておきます。これをもとに、現場スタッフが自信をもって対応することができれば、おのずと解決が容易になったという例も少なくありません。
以上のように、カスハラ対策は現場スタッフの問題だけではなく、組織の的確なバックアップが不可欠です。カスハラやハードクレームに対応している従業員のリソースを他のお客様に使うことができれば、さらなる顧客満足の向上を実現することが可能になります。
津田 卓也:クレーム研修担当講師/Cube Roots代表
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