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「苦手なこと」は克服するのではなく"回避する" 「恐怖」は人が生きていくために必要不可欠

東洋経済オンライン / 2024年9月20日 19時0分

でも就職活動が終わって落ち着いたら、必要以上に手を洗うことはなくなりました。誰しも自分に余裕がないと不安が強くなる傾向があります。でもその不安の原因がなくなると、きれいさっぱり忘れてしまうこともあるのです。

私の場合も、しきりに手を洗っていたのは、手が汚染されているという恐怖ではなく、違うところに原因があったのです。その原因が取り除かれれば、恐怖は消滅したのでした。

ですから、もし今何かに対する恐怖や不安があるなら、少しふり返って「自分が今何に困っているのか」「何を解決しないといけないのか」を考えたらいいのではないでしょうか。

就職して、電話がとてもこわくなったという人は、もしかしたら、職場の環境や仕事そのものに問題があるのかもしれません。あるいは人間関係に行き詰まっている可能性もあります。

原因がどこにあるのかふり返ってみて、原因を取り除くことを考えてみてもいいと思います。原因が解決できれば、私の手洗い恐怖のように、いつのまにかなくなっていることもあるかもしれません。

恐怖心が人間性を磨く

それに恐怖心は悪い影響ばかり与えるものではありません。それがあることで、逆に生きる原動力になっている面があります。欠点と同じように「自分のこういうところがダメだから、ここをがんばろう」と健全な方向に成長する力になるのです。

たとえば恐怖症の人は心配性でもあるので、商談の時間に遅れるのが心配だから早めに会社を出たとします。すると電車が遅れても、時間に十分間に合って取り引きがうまくいった、というようなこともあるでしょう。

恐怖心や不安感があるからこそ、準備万端整えたり、最悪にそなえて打開策を考えたりしておけるといえます。つまり視野が広がり、ビジネスの力もついてくるというわけです。

電話への恐怖心を克服するために、いろいろなことを実践するうちに、ビジネス力も人間性も磨かれていけば、「電話恐怖症があってよかった」とさえ思えるようになるかもしれません。

電話に限らず、苦手とうまく付き合うことも大切なスキルだと思います。すべてを完璧にしようとせずに、気持ちにゆとりをもって過ごせることこそが、恐怖心を払しょくするために必要なセオリーです。

大野 萌子:日本メンタルアップ支援機構 代表理事

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