JR貨物、不正を起こした「不適切な風土」の深層 データ不正が「現場の知恵」と化していた可能性
東洋経済オンライン / 2024年9月20日 8時0分
輪軸データの不正問題は、東京メトロ(東京地下鉄)や京王電鉄でも発覚するなど鉄道業界全体へと飛び火した。国土交通省は全鉄道事業者に対して緊急点検を指示、9月30日までに結果の報告を求めている。さらなる広がりを見せそうなこの問題の端緒となったのがJR貨物だった。
「コンプライアンスへの意識、教育が不十分だった。社員がコスト削減のために今回の行為に至ったとすれば、それを是正する教育をしっかり進めなければならない」
9月11日にJR貨物が開いた会見。犬飼新社長は深々と頭を下げた。
機関車や貨車の車輪や歯車を車軸にはめ込む際、圧入力値が基準の上限値を超えていたにもかかわらず、データを書き換えるなどして検査記録を作成していた。基準値の上限値超えは最大10%だった。
不正行為には広島、川崎、北海道の3つの車両所で計11人が関与し、機関車4両、貨車627両で検査データに問題があることがわかった。不正は2014年頃から行われていたという。
7月の脱線事故を機に表面化
問題発覚のきっかけは、今年7月に起きた山陽線新山口駅での脱線事故だ。事故をめぐる社内調査で広島車両所の社員がデータ改ざんを告白した。
車輪や歯車を無理に押し込むと、車軸に「かじり」と言われる傷ができ、それが広がって車軸が折れてしまう危険があるという。7月の脱線事故では機関車の車軸が折れていた。折損との因果関係はまだ不明だが、当該車両ではデータの改ざんが行われていた。
9月10日に問題を発表した後、同日深夜になって未確認データがあったことが判明。確認作業のため11日午前中から全国で運行していた248本すべての列車を順次停止させた。この影響で、物流網は大混乱となった。
宅配便各社は代替トラックの手配に追われ、ヤマト運輸は成田空港から北九州に臨時の貨物便を出した。それでも荷物の到着が遅れ、引っ越しの日程に影響が出た。北海道からの農産物も道内各地でトラックへの積み替えを余儀なくされ、フェリーで本州に向かうことになった。
「天候不順でしょっちゅう貨物列車は止まる。今回も粛々と代替輸送に切り替えて影響はほとんどなかった」。あるメーカーの担当者は皮肉交じりにそう話したが、利用者からは不満の声が噴出している。
代替輸送の手配に追われた運送事業者は「発生した費用は今後JR貨物と協議する」と憤る。貨物鉄道を利用しているというメーカーの担当者は、「安定輸送はメーカーにとっていちばん大事。JR貨物にはこうしたことが二度と起きないよう早急に対策を講じてほしい」と注文をつける。
3つの車両所での「不正」
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