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JR貨物、不正を起こした「不適切な風土」の深層 データ不正が「現場の知恵」と化していた可能性

東洋経済オンライン / 2024年9月20日 8時0分

JR貨物において「不正」はむしろ「現場の知恵」であり、ゆがんだ技術継承が行われていたのではないか。こうした運用に疑問をもった社員はいなかったのか。また、疑問をもった社員が声をあげることができていたか。こうした点は今後の原因究明の中で重要なポイントになるだろう。

犬飼社長は会見翌日の9月12日、社員向けに文書を発出した。その中で、「今回の不正行為は、これまでの不適切な風土が顕在化したコンプライアンス違反であり、貨物鉄道事業者への信頼を揺るがす事態となっている」と断罪している。

しかし、現場の問題以上に経営の責任は重い。看過できないのは、不正に関与した作業員が「作業工程(が遅れること)を気にしていた」「部品が廃棄になることを恐れていた」などと社内調査に答えていることだ。

直近3期は最終赤字が続いているJR貨物では、「トライ・コスト削減運動」を打ち出し、犬飼社長が現場を巡回して徹底的なコスト削減を説いている。コスト削減の「ターゲット費用科目」には車両修繕費などもあげられ、本社の現業部門には「トライ・コスト削減担当」も置かれている。

企業風土を改められるか

行き過ぎたコスト削減はなかったか。会見でそう問われた犬飼社長は、「無理なコスト削減は決してやっておらず、安全への投資は計画的に進めている」と答えた。

そのうえで経営責任について「社長として重い責任を感じている。原因究明や対策を早急に進めることに注力したい」と述べた。

今回の不正発覚でコスト削減のあり方は見直しが必要になるだろう。そしてコスト削減以前に、社員が疑問に思ったことを気軽に声に出せる企業風土づくりが急務だ。犬飼社長の言う「不適切な風土」は経営のあり方によって醸成されたものであり、それを改めるのも経営者の責任となる。

森 創一郎:東洋経済 記者

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